オルキリア元ちきーた

団地のオルキリア元ちきーたのレビュー・感想・評価

団地(2015年製作の映画)
3.3
漢方薬局を廃業して大阪近郊の団地に引っ越してきた夫婦を主人公に、彼らの謎めいた行動が噂好きの住民たちを巻き込み思わぬ騒動に発展していく物語。

ジム・ジャームッシュの「デッド ドント ダイ」みたいなノリ。
ロン・ハワードの「コクーン」(1985)にも通じる感じも無くなはない。

けど、やっぱり藤子不二雄のファンタジー漫画の実写版みたい。

最後のオチは、ちょっと蛇足な感じ。
それまで築き上げたストーリーを全部ぶっ潰す結末が、とても日本映画らしい。
ドロドロしてそうな人間関係や重たいサブテーマを大阪弁のコミカルな会話回しで重さを感じさせないのはよかった。
斎藤工のポジションも物語から浮いてて、それが湿っぽさを軽減させてくれているのも良い。
でも、あそこまで浮いてると、途中で何となくその先が読めてしまって、最後は「やっぱりそう来たか」と思えてしまった。
だからこそ、ここぞという所にもズシっとしたインパクトに欠けてしまったのが残念。
ファンタジーに寄りすぎてしまって、メリハリが薄くなってしまったため、主人公夫婦の抱える暗い面や、少年の背負う傷が強調されて来ない感じが退屈に感じてしまった。

引きこもった夫の心情をセリフだけでなく、もう少し丁寧に描いてくれたら、もっと感情移入出来たのでは?と思う。

もっと暗い過去のエピソードの描写や団地の人間関係のドロドロして行き場が無くなってしまうリアリティがあれば、夫婦があの団地から離脱する時のカタルシスが増していたのでは?と感じてしまって惜しい。

「顔」(2000)が結構面白かった印象なので、パワー不足が否めなかった。