うべどうろ

ポンヌフの恋人のうべどうろのレビュー・感想・評価

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)
3.6
 レオス・カラックス、アレックス三部作の最終章。たしかに、この映画にあこがれる人が多いこともよくわかる。橋の上での花火のシーンなんかは、本当に圧倒的に美しく、続く水上スキーのシーンなんかも、はっきり言って異常な芸術性であるとも思える。(おそらく莫大な費用がかかっているだろうし)。さすがカラックス!超天才ではないか。
 あるサイトが、この映画と「天気の子」を重ねて論じていたが、僕も同じことを思った。この登場人物、ミシェルとアレックスは、まさに「自分のこと」しか考えていないのだ。そして「自分のこと」を考える過程で、その手助けとなる、あるいは、都合よく「自分のこと」を考える手助けとなる存在として、相互に好意を寄せているような気がする。とても破滅的な関係であり、互いが求めているのは、自分を見つめてくれる「目」に違いない。この一貫した描かれ方が、作品の芸術性ゆえに破綻の足音さえ聞こえる物語を補修して、傑作たらしめているように僕には思われた。
 だからこそ、最終的に「目」を取り戻した二人が結ばれることに、とても違和感があった。アレックスは自分を「見られない」ミシェルだからこそ愛し、ミシェルは自分の見えない「目」を愛してくれるアレックスだからこその関係だと思ったからだ。作品全体の美しさに比して、その最後の結論だけ納得がいかなかったのが残念。
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