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リベリオン ワルシャワ大攻防戦のHKのレビュー・感想・評価

3.0
ヤン・コマサ監督によるポーランドの戦争映画。ワルシャワ蜂起が舞台。キャストはユゼフ・パウロフスキー、ゾフィア・ヴィウワチュ、アンナ・プロシュニアクなどなど

ナチスドイツに5年間も支配され、ついに革命軍であるポーランド国内軍が反旗を翻して抵抗運動を開始したワルシャワ蜂起が始まった。しかし、そこでは救助を約束したソ連軍の裏切りなどもあり、戦争に巻き込まれた若き命たちは無惨な死を遂げていく。

先ほど紹介したジュード・ロウ主演の『スターリングラード』のような英雄譚とは違い、激動の昭和史沖縄決戦のようなひたすら戦争の悲惨さや残酷さ、それに踊らされる若者たちを描くアプローチは良かったと思う。

特に平和的なやり取りが行われている時に急に戦闘が開始され、兵士たちが玩具やゴムまりのように飛んでいく戦闘シーンは、喜八の戦争映画におけるニヒリズムとかに近しい乾いた死を連想できるので大好き。

ひたすら爆撃でぶっ飛んで人が無惨に死んだり、はじめは能天気だった主人公の若者がそんな光景を見るにつれて段々と人間性を失っていく姿を映したりするのはとても良かった。

ワルシャワの赤い雨宜しく、爆撃で吹っ飛んだ人々の肉塊が血の雨となって降り注ぐシーンもオーバーで表面的ではあるものの、少なくとも視覚的には満足することが出来た。

終盤では爆撃で死んだ同胞たちの死体の山がぎょうさん積まれていた。あそこは『復活の日』を思い起こした。

ここまで言えばすごい私の好きな戦争映画だと思うでしょう。ですが、点数は3.0。ええ、低いほうですよ。なんで3.0にしたって?悪い所が多くて相殺しちゃったからですよ。

ここから先はこの映画好きな人は読むことを控えることをお勧めしますよ。

なんでか分かります?一回見た人なら分かるでしょう。

なんなの?あの糞みたいなスローモーションと取ってつけたかのようなミュージカル映画要素は?あと、終盤のセックスする際のPVみたいな演出の仕方なんなの?なめ切ってんの?

あんなん真面目な映画見ている際に挿入されたら噴飯ものですよ。ものの見事に映画を今言った演出で陳腐化している。ワルシャワ蜂起そのものを茶化して愚弄しているとしか思えない。

そりゃ、私の好きな映画監督である岡本喜八だって、戦争映画にミュージカル要素をくっつけたりすることで重い鈍重な戦争映画を娯楽的にすることで傑作を生みだしてきましたよ?

でもどうしてそういう軽い演出をしたのか分かります?それは戦時中、どうしようもない不条理を叩きつけられ人間性を失いかけても生きるために正気を保たなくてはいけないそんな人たちが毎日を人間的に過ごすために生み出した生きる知恵としてこういうミュージカル演出を生み出したんですよ。

ある意味、この時の戦時下の人たちに対して真摯に向き合ったうえでの演出方法だったんです。それが何ですか?この映画におけるミュージカル要素は「若者も見なくちゃいけないから若者も好きそうな演出も入れとくか」ぐらいの、商業的に人をなめ切っているような理由で付け加えたとしか到底思えない。

あんなの入れたせいで、前述した戦闘シーンも、若者たちのミリタリーごっこの延長にしか見えなくなった。

最後の戦闘シーンもド迫力だけどプライベートライアンには到底及ばないし、下水道移動シークエンスもひたすら奇抜な演出しとけば地獄が描けるだろうと思っている。あそこもアンジェイワイダの『地下水道』なんか比べるのも失礼な程に酷い。

だから限りなく表面的なアプローチに近しいので、そこには残念ながら骨太な、それこそ当時の悲惨さを真摯に撮ろうという中身や芯のものが何一つない。だから見終わった後は、訳も分からずに腹だった。

ですが、前述したあくまで”表面的”な良い所もあるし、私は1を見て10批判するようなやり方は嫌いなので、3点は上げます。しかし限りなく1点に近しい3点だと理解していただきたい。

こんな映画見るくらいならまだ邦題が同名でクリスチャンベイル主演の『リベリオン』の方が断然よい!ヤン・コマサはアンジェイ・ワイダの戦争映画を全て100回以上見て爪の垢を煎じて飲むべし!

あまりにもなめきってる。見れて良かったと思います。
HK

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