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無伴奏のbluemercenaryのレビュー・感想・評価

無伴奏(2016年製作の映画)
3.8
全国に学園紛争が広まっていた1969年の仙台。
高校生響子は教室で制服反対運動を演説していた。
本格的に政治運動を望んでいるわけではなく、少し背伸びして大人の真似事をしている程度。

両親が東京に転居したため叔母の家に居候する響子。
ある日立ち寄ったクラシック喫茶「無伴奏」で大学生の渉と祐之介、そして祐之介の恋人のエマと知り合う。
背伸びしたい盛りの響子にとって、無伴奏に立ち寄って祐之介たちとの交流は居心地が良い。
いつしか、渉と響子は祐之介とエマの影響もあって、ごく自然な成り行きで恋人同士になる。
響子と渉が結ばれた日、茶室の入り口でじっと覗いている祐之介があった。

ある夜の事、響子の家に来る筈の渉が来ない。
たまり場となっていた茶室に行った響子は、そこで祐之介と渉の行為の最中を目撃してしまう。
衝撃を受けたものの渉と響子の関係はそのまま。
やがてエマが妊娠。
そこから悲劇が始まった。



学生運動時代の青春物語。
彼等がノンポリだったとしても、些か淡々で静謐過ぎる展開ではないかと思ってた。
この年代しか持たない激しさとかその辺ね。
だけど観賞後、「あぁ、成る程」と。

しっかりした脚本と丁寧な演出が狙ったのは“若者のリアル”。
ここで云うリアルは等身大とか身の丈とかね。
どこか遠く、空虚に感じていた学生運動にシニカルに距離を置きつつも、“狭間”と“許容”で足掻くリアルな恋愛。
自分に出来ること、与えられること
自分の理解の向こう側を認めるか、許せるか。
誰もが辿る道なんだけど、響子の場合はあまりに非情で残酷なもの。

青の季節は敗北の季節
エンディングで一人、無伴奏を訪れた響子。
そこには否応無しに成長した姿が。

青の季節は敗北の季節・・・・そして何の季節だろうか。
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