取り返しのつかない規模の原発事故により、国を棄てざるを得なくなった近未来。
避難のために優先順位がつけられていく元・日本に暮らす人々を描いていく。
静けさと美しい画が、終末を巧みに表している。
そして、音。
抑制された空間には、削ぎ落とされた音使いがふさわしい。
誰とも心は分かち合えない。
取り残された人々同士でさえも。
少しずつ少しずつ、絶望は広がり、死へと追いやられていく描写に息がつまる。
そして心を持たないはずのアンドロイドは、静かに一つの命が終わりゆく様を見つめていた。
まるで家族のようにあたたかな視線で…。
ユルグ・ブットゲライトの「死の王」やピーター・グリーナウェイの「ZOO」を想起させるシーンがとても鮮烈。
極めて独特の味を持つ作品だ。
じわりじわりと染み入る。
オススメの映画です。