spacegomi

早すぎる、遅すぎる、のspacegomiのレビュー・感想・評価

早すぎる、遅すぎる、(1982年製作の映画)
4.8
バスティーユ広場をぐるぐると回り続ける長回しから映画は始まり、のっけから楽しい。解釈の手助けをするような画面の親切心は欠片もなくて、観客にはただその土地を眼差し、テクストと自然音に耳を傾け続けることを要求する。人々の抵抗する姿よりも、地に根ざす風景や生活を、たとえば不意に現れる鳥を、確かな距離を保ちながらゆっくりとしたパンで捉える。『工場の出口』オマージュでは、リュミエールには拾い得なかった音に拘り、人々が画面から立ち去ってもなお、オフの話し声や自然音を執拗に捉え続けようとする。ロングショットとパン一辺倒だったカメラが前進する終盤のシークエンスも泣ける。農民が共産主義革命を起こすには早すぎたが、そこに言葉がもたらされるのは遅すぎた。

自分用メモ:エンゲルスがカウツキーに宛てたフランスの農村部の貧困についての書簡と、エジプトにおける階級闘争の書をテクストとして採用し、それらをオフの声で朗読しつつ、それぞれの地をカメラが捉える、S=Hの最初のドキュメンタリー。もっとも彼らはドキュメンタリーという言葉を嫌うようである。アフレコではなく同録で、英、仏、伊、独の4言語のバージョンが存在するらしい。今回鑑賞したのは仏語版(+日本語テクスト)
spacegomi

spacegomi