MasaichiYaguchi

ジーサンズ はじめての強盗のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.7
テレビのバラエティ番組で、生まれて初めて「おつかい」に挑戦する子供たちの奮闘をドキュメントタッチで描く「はじめてのおつかい」というのがあるが、この作品では80歳過ぎの3人のジーサンたちが「はじめての強盗」に挑んでいく。
有川浩さんの小説をテレビドラマ化した「三匹のおっさん」シリーズでは、おじいちゃん3人が私設自警団を結成して町内の悪に立ち向かうが、本作のジーサン3人、ウィリー、ジョー、アルは少し前までは善良な市民として平和に暮らしてきたのに、ある出来事から追い詰められて二進も三進も行かなくなり、悪事に及んでいく。
この作品には「ビバリーヒルズ・コップ」、「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」のマーティン・プレストン監督の「お達者コメディ/シルバー・ギャング」(1979年)というオリジナル版があり、それを現代風にリメイクしている。
邦題や「終活は銀行強盗!?」というキャッチコピーからは、ジーサンたちによる“お気楽コメディ”という印象を受けるが、それだけの作品ではない。
人生も最終盤にいる彼らが何故、重罪に問われるリスキーな強盗に手を染めなければならなかったのか?
そこにある問題は、ニューヨークのブルックリンに住む彼らだけのことではなく、高齢化社会の日本でもヨーロッパ各国においても共通なものだと思う。
それにしても、ウィリー、ジョー、アルを演じる超ベテランのオスカー俳優たち、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンの「お達者コメディ」を超えたエネルギッシュな笑いの数々には脱帽する。
更にそこには人生の酸いも甘いも噛み分けた“滋味”のようなものがあり、その味わいが、このクライムコメディに家族愛や仲間との絆といった血の通った温もりを与えている。
この80歳オーバーの名優たちが繰り広げる痛快コメディを観ていると、同世代の人々ばかりだけではなく、その子供世代の我々も未だ未だ頑張らねばと思えてきます。