Inagaquilala

ジーサンズ はじめての強盗のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.8
劇場をハシゴしてこの直前に観た作品が「マローダーズ 襲撃者」、奇しくも銀行強盗ものが続いたのだが、こちらはクライムミステリーではなく、クライムコメディ。作品のタッチはまったく異なるのだが、襲撃した銀行がなぜか同じももののように見え、手口も実によく似ている。もしかしたらこれがいま「ハウ・トゥー銀行強盗」のスタンダードなのではないかと思ってしまう。

それにしてもこの邦題はセンスのかけらもない。モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンと3人のアカデミー賞俳優が主演を務めているというのに「爺さんず」とは。そのうえ「はじめてのおつかい」ならぬ「はじめての強盗」。ロッタちゃんもびっくりしてしまうのでは。原題は「Going in Style」で、「スタイルのあるやり方でやる」という意味らしく、3人の老人たちが失われた年金を銀行強盗のかたちで取り戻すということを、こう表現しているらしい。

ウィリー(モーガン・フリーマン)、ジョー(マイケル・ケイン)、アル(アラン・アーキン)の3人は、40年以上同じ会社で働いてきたが、いまは引退してブルックリンの公園でローンボーリングを楽しみながら、平穏に暮らす毎日だった。ところが、彼らの働いていた会社が買収され、年金も再建費用に回され、支給がストップされてしまう。そんなとき、ジョーは偶然、銀行強盗の現場に遭遇し、彼らが人も殺さず手際よく現金を奪っていたのを目撃する。

ジョーの発案で、自分たちの年金だったはずのお金を保有する銀行を襲って、老後の資金を取り戻そうと計画する。手始めに近所のスーパーで「強盗」を試みるのだが、体力もスキルもない彼らは、すぐに警備員に追われることに。そこで伝手をたどって、彼らは強盗のプロに指南を受けるのだが。

もちろん、高齢者の3人組による銀行強盗の場面もこの映画の見どころではあるのだが、この作品の肝は、彼らが銀行強盗の後、如何にして元の平穏な生活に戻っていくかが焦点。そこに実はいろいろな彼らなりの策が凝らされている。

なるほどと思わせる謎解きのシーンが終盤展開し、観終わった後にはなかなかの爽快感さえ感じる。とくに最後のダイナーでの緊張感あふれる対決は、悪いほうへの結末へと考えてしまったが、ハラハラドキドキさせながらも見事に収束させ、あまつさえちょっとニヤッとするサプライズも用意されている。邦題のダサさとは裏腹の、洒落た、まさに「Going in Style」なラストシーンだった。
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