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ビリー・リンの永遠の一日のmのレビュー・感想・評価

ビリー・リンの永遠の一日(2016年製作の映画)
4.8
「ライフ・オブ・パイ」以来のアン・リー監督最新作は、通常の映画のセオリーを捨てて挑んだ意欲作。

口では『君達は国の為に戦っている英雄だ、君達を誇りに思う』などと言う市民達が結局の所兵士達をどう他人事のように軽く扱うか、それが如何に若い兵士達に屈辱を負わせ傷付けるかを彼らの視点から見事に描き出している。

プロパガンダの為にハーフタイムショーに引きずり回される兵士達の姿は「父親たちの星条旗」に重なる。PTSDによるフラッシュバックでショーと戦場を行き来する構成も上手くハマった。


惜しむらくはこの映画は全編HFR撮影(ハイフレームレート撮影、ざっくり言うと映像がヌルヌル動いて見えるやつで「ホビット」1作目で使われた)で撮られているのに、日本国内では通常のコマ数に変換されたものしか観る事ができず、その映像の真価を観る事ができない事だ。
「ホビット」では毎秒48fps(コマ、普通の映画は24)だが今作では120fpsで、より現実感のある映像の動きになるという触れ込み。その臨場感が活きる題材だったと思うのだが・・その辺りでこの映画の本当の形を観る事ができなかったのが残念。
それを抜きにしてもこの映画の撮影は微妙に普通の映画らしい決まった撮影を避け続ける試みをしていて、妙な生々しさを産んでいる。


クリステン・スチュワート、ヴィン・ディーゼル、ギャレット・ヘドランドらが流石の演技で素晴らしいが(あなたのそんな顔は見たくなかった、という顔を晒してくれるヴィンに衝撃)、主人公を演じたジョー・アルウィン、チアリーダー役のマッケンジー・リーの2人の新星が印象深い。


最初はみんな薄い顔だなと思っていた主人公の戦友達が、ラストでは主人公の心情にシンクロして味のあるかけがえのない人達に見えてくる。
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