いずみたつや

ビリー・リンの永遠の一日のいずみたつやのレビュー・感想・評価

ビリー・リンの永遠の一日(2016年製作の映画)
3.6
一度は日本公開が決まったものの延期され、いつの間にかAmazonプライムビデオでひっそり公開されてしまっていた作品です。なぜ!

いきなり技術面の話で恐縮ですが、この映画のクライマックスは「4K」「1秒120フレーム」「3D」という史上初の挑戦で撮影されたものだったため、フルスペックじゃなくても最低でも上映して欲しかった作品なんです!なのに何の説明もなく公開延期のまま終了ってどういうことやねん!

気を取り直して、映画の内容に入ります!

扇情や誇張の前に個人の尊厳や真実が蔑ろにされてしまう"巨大なショービジネス"や、戦争が身近な国とは言っても多くの国民の中にあるであろう"無関心"、上っ面だけの"理解"など、アメリカという国を強烈に皮肉った作品です。

ただ、あまりにもそのまま日本に置き換え可能で心底恐ろしくなりました。

『ハート・ロッカー』『アメリカン・スナイパー』とも通じるいわゆるPTSDモノですが、主人公の年齢もあって、青春映画の要素が加わっている点がその2本とは少し違う部分かなと思います。

尊敬する上官との会話や、チアガールとの淡い恋、姉弟の心のつながりなど、青年の成長が詰まった瑞々しさを感じられる作品でした。

一方で豪華絢爛なショーと、19歳の葛藤の対比がとても残酷でした。夜空に虚しく咲く花火。家族、仲間、恋人、それぞれの間で揺れるビリー・リンが最後に下した決断…。現代の戦争の空虚さに胸が苦しくなりました。

余談ですが、主人公と恋に落ちるチアガールを演じたマケンジー・リーが可愛かったです。本当に余談ですみません!