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ドント・ブリーズのYOUのレビュー・感想・評価

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)
4.1
フェデ・アルバレスが監督・共同脚本を務めた、2016年公開のサスペンス・ホラー。
窃盗を繰り返す3人の若者が侵入した先の盲目老人の家で想像を絶する恐怖に巻き込まれていく様子を描いた本作は、製作費100万ドル以下という低予算映画にも関わらず全世界で興収1億5000万ドル以上の大ヒットを記録したとのこと。上映時間は88分、「調子こいた若者たちが向かった先で恐ろしい体験をする」という定型的な物語、主要登場人物は4人のみ、更にほぼ全編が一軒家の中で繰り広げるという事で、一切奇を衒うことのない”超真っ向勝負な一作”として仕上げられている本作ですが、結論としてはこの作品全体のスタンスと同じく「理屈抜きに楽しめる、無類に面白いホラー映画」になっていると思います。それはひとえにフェル・アルバレスの端的かつ的確な演出と、ホラー映画精神満載のオリジナル脚本が功を奏しています。まず本作は大胆にも、88分の上映時間のうち主人公ロッキーを含む強盗3人の紹介とバックボーン描写に最初の20分程度が費やされています。もちろんこの序盤にも不必要な描写は一切無く、早くもアルバレス監督の手際の良さが伺える一幕ではあるのですが、ここは同時に「あと残り1時間弱しか無いんだけど…」という通常の映画では抱かない感情にも駆られました。しかし本作はここからが凄い!何しろ残りの1時間で語られる「承・転・結」で”驚きやスリルの度合いも段階的に倍増していく”ので、文字通りノンストップで爆走し続ける本作には最後までクラックラしっぱなしです。特に起承転結の「転」パートにおける、まさしくこちら側のエモーションを急激に一転させるような”ある驚愕の事実”、そしてそこに込められた老人の強く激しい悲嘆と憎悪をいきなり一つの画として見せられてしまう”異常な光景”には本当に心底ギョッとさせられました。ただこうして観客の予想を次々と上回っていく本作は極めて映画的な喜びや快感にも満ちていますし、やはり最終的には「めちゃくちゃ面白かった」というありきたりかつ率直な感想に落ち着かざるを得ません。

色々なサイトやレビューを見ていると「主人公ロッキーがクズ女過ぎて楽しめなかった」という感想も多々見られます。私自身は彼女がそこまで酷い人という風には感じませんでしたが、確かに序盤は老人側にこそ感情移入していたかもしれません。「だからこそ」ですよ!だからこそ本作では前述したあの急展開がよりショッキングな形で響いてくる訳で、自分は明らかに意図的な描き分けだと思います。また本作は観客を強烈なゴア描写や大音量によって驚かせるのではなくしっかりと世界観や演出の力で怖がらせる辺りも、ホラー映画の作りとして非常に誠実で上品だと感じました。自分はもうこういう部分にまで尽く好感が持てますね。「短い尺と豊富な面白さ」って、映画を観る上で最も理想的な条件ではありませんか。これは事前の予想を遥かに超えて面白い一作でした!そして続編ではまさかのジジイが主人公!『ドント・ブリーズ2』も是非とも観てみたい!




















































































































って言いながらもう観ました、『ドント・ブリーズ2』。こちらはこちらでめちゃくちゃ好き!
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