ボブおじさん

ドント・ブリーズのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)
3.9
目の見えない老人の家に忍び込んで、ため込んでいた現金を根こそぎ奪おうとした不埒な若者たちに、退役軍人で危険な爺さんがキツーいお仕置きをする痛快なアクション映画……ではない😅

多額の現金を隠し持つと思われる盲目の老人を狙う3人の素人強盗と聞けば、強盗側から見た現金奪取の〝クライムサスペンス〟か、盲目老人を主役とした座頭市ばりの〝アクション映画〟かと想像する。

だが、この映画はそのどちらでもない。イヤ、厳密にはそのどちらの要素も含んではいるが、入ってはいけない家に盗みに入ってしまった3人の若者が体験する、〝ショッキングスリラー〟である😱

簡単に大金が手に入るはずだった強盗計画は、思わぬ誤算により、〝息もつかせぬリアル鬼ごっこ〟へと変わっていく。

まさかこんなに耳がいいとは‼︎
まさかこんなに腕が立つとは‼︎
まさかこんなにヤバい奴とは‼︎

地獄の戦場を経験したであろう盲目の老人は、自分の家では今でも最強の戦士、更に暗闇では無敵のリーサルウェポンへと化していく。果たして3人は無事生きてこの家を出ることができるのか‼︎


〈余談ですが〉
この映画の舞台となるデトロイトを描いた映画といえば「ロボコップ」「アイ、トーニャ」」「8Mile」「グラン・トリノ」など、どことなく閉塞感に包まれた雰囲気が漂っている。

フォード・GM・クライスラーなどかつてアメリカ経済を支えた自動車産業で栄えたモータウン。今ではすっかり寂れて住む人も減り空き家が多く税収もない。その為、街には街灯も少なく夜は漆黒の闇と化す。

行き場のない者と思い出に浸る老人はこの終わった街に残り、未来を見据える若者たちはこの街から出て行こうとする。

この映画の老人もかつては仕事も家庭もあり、幸せな日々を送っていたのだろう。だが、いつしか老人の周りから仕事も人も去っていき、暗闇の中で生きるようになっていた。

栄枯盛衰のデトロイトの街と孤独な老人の姿が重なって見え、この映画の闇に呑み込まれた独特な世界観を作り上げている。