YasujiOshiba

ドント・ブリーズのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ドント・ブリーズ(2016年製作の映画)
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「神がいない事実を受け入れたら、
 人はなんでもやれるのさ」
There is nothing a man cannot do
once he accepts the fact that there is no god.

このブラインドマンのこのセリフがすべて。あと特筆すべきは、イラク戦争の生き残りだってこと。戦争で文字通り盲目になった男が、ホラー映画の悪のヒーローとなるという皮肉。

でも、よく考えて見ればこのブライドマンは、特に悪いことをしたわけではない。むしろ、その視力を奪った戦争で儲け、娘を奪われても復讐を許されない社会に、えげつない手段で反発していただけなのだが、そこはえげつなさを強調しなければ、強盗に入った若者たちが、ただのおバカになってしまう。

そこがこの映画の後味の悪さ。一緒に見ていた娘から「ナーメテーター」(なめてかかったらターミネーターなみの強さの意)という言葉を教えてもらったけど、そういうアクション系の演出は、さすがに評判になるだけのことはあったけど、後味の悪さが微妙にあとをひく。

それでも、なんとか最後まで見られたのは、 ジェーン・レヴィのスクリームクーンぶりのおかげ。『死霊のはらわた』(2013)のリメイク版でも、叫びまくっていたけれど、今回は、その叫びを抑えて叫ぶという荒技に挑戦して、じつに見事でした。パチパチパチ。

p.s.
そうか、たしかに舞台はデトロイトでしたね。うん、あの風景は荒んだ感じは、じつにこの映画の主人公なのかもしれません。そして、だからこそ、若者たちが強盗に入るしかないという状況を説明してくれるものでもありますからね。
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