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団地妻 隣りのあえぎのKのレビュー・感想・評価

団地妻 隣りのあえぎ(2001年製作の映画)
5.0
『空き部屋』
脚本にいまおかしんじが入っているからか、踊りということがしばしばテーマになる。
切り返しショットは使わず小津の原節子と笠智衆が前後に並ぶような構図がちょくちょく見られる。と思ったら鎌倉に行く。
隣の部屋の喘ぎ声を聞くところからはじまり、ある種のピンク映画にありがちな出鱈目なパワーというよりは、夫の腰のマッサージとか、パチンコ屋での手の触れ合いとか、クラブで踊ったりとか、いちどは理性で拒否してからの姦通であるとか、東京湾でのじゃれ合いとか、丹念な演出がエモーショナルを増幅させて、鎌倉の海で全身ずぶ濡れのぐっちゃぐちゃになる。
それからの狂ったような濡れ場も出鱈目さに驚かされるというより、ギュッと胸を掴まれたような感じで、それは海に飛び込んでぐっちゃぐちゃになっているからなんだと思う。他者をおたがいに欲し合う男女はひとつになって溶け合いたい。その契機として流動的で別け隔てないものの代表である海がある。だけど、ひとの身体はあくまでも固体であって、水のようには混ざり合えないから身体を重ねる。身体を重ねるだけでは満足できないから「もっとぐちゃぐちゃにして! 私の身体を壊して!」なんて言葉が口をついて出る。
欲望を解き放ったのが海であれば、その心を落ち着かせるもまた海であったことも、ロケーションの素晴らしさから有無を言わさず納得させられてしまう。車のフロントガラスに反射する木の葉の揺れるのも美しかった。
染み染みといい映画だなぁと思っていたら、クレジットロールの助監督に堀禎一の名前があって、この現場から堀禎一が育っていったんだなぁと大いに納得。
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