Kumonohate

クリーピー 偽りの隣人のKumonohateのレビュー・感想・評価

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)
4.2
暴力的な上下関係を伴う共依存の心理状態、特に下位者のソレは、実際にその状態になったことがある者、あるいは、その状態に近づいたことがある者にしか理解できないのだろうと思う。だから、そうなったことが無い者には、彼らが何故そんな暴力で支配されるような状態に甘んじていたのかが、さっぱり理解できないのだろうと思う。

一方で、本作の劇中で語られているところによると、あるタイプのサイコパスの心理分析はほぼ不可能だとのこと。となると、そんな奴が暴力的共依存関係の上位者だったりすると、上も下もその心の中は真っ暗闇で、事件の真相など全く見えてこないに違いない。

そして、自分の身に引きつけて考えてみると、同じ真っ暗闇ではあっても、得体の知れないサイコパスよりも、共依存関係の下位者が抱える心の闇の方が遙かに恐ろしい。それは、こうした事件の発生要因が、加害者たるサイコパス側だけにあるのではなく、被害者である非サイコパスの側にも潜んでいるように思えるからであり、自分が(サイコパス側になることは無いにしても)、被害者側になる可能性を否定できないと思うからである。つまりは、もしかしたら、自分が被害者側として事件を作り出してしまうことがあり得るのではないか、という恐怖を感じるのである。

映画鑑賞中、加害者であるサイコパスに憎悪を感じるよりも、被害者である非サイコパスの女性に対する「何やってんだよ!何でそんなことするんだよ!」という、“困惑→苛立ち→ムカつき” の気持ちの方がずっと強かった。そんなどす黒い気にさせられる本作は、問題の本質を突いて我々を動揺させる、実に見事な作品だと思う。
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