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クリーピー 偽りの隣人のtakatoのレビュー・感想・評価

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)
4.1
 皆さん、嫌な映画ってありますよね?。世界観、人物、暴力描写、終わり方、後味悪い要素って色々ありますけど、ほんと~に嫌ですよねぇ、ああいうの。悪い影響を与えるとか言われても正直弁解できない感じありますしね。こんなもん作る人の気が知れないって感じ。ですけど、なんか見ちゃう。怖いもの見たさというか、嫌だとわかってても気持ち悪い病気の症例とかを何故か見ちゃったり。不快なのにズルズルと引き摺られちゃう物がなにか潜んでいる。本作は正にそういう作品です。

 黒沢清さんのインタビューで本作の真空パック殺人を描いたのは、映画史でもそうないだろうって記者さんに語ってたら、「ボーダーライン」でやってましたよって言われて心底ガッカリしてたという記事を読んで、この人は本当に…と思いつつも興味をもって視聴。

 当初は「冷たい熱帯魚」に似てるかなぁ~と思ってたが、あれより数倍不穏さ+空虚な悪意感が凄い。デンデンさん演じる連続殺人鬼は、金とか女とかの欲求というまだわかりやすい所、論理で通ずるところがあったけど、本作の香川さんは本当に不気味。多少の金は求めてるけど、別に…という空虚さに満ちていて、ファンタジーさもカリスマさも欠片もない。黒沢監督が持っている不気味さと、ありふれた現実にあけすけに登場する悪意や狂気といった資質が本作では見事に調和している。ただ、韓国映画の傑作とかが持っている圧倒的な「置いてかれる感」、もしくは絶望感とはまた違う。そういった劇的なドラマにすら発展しないところまで黒沢監督らしいといえばらしいかな。黒沢監督作品では現時点で一番好きかも。ネタバレ込みでラストについては、コメントのほうに書きます。
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