メランクさん

クリーピー 偽りの隣人のメランクさんのネタバレレビュー・内容・結末

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

黒沢清監督に苦手意識があったんですが、これはもうやられました。

ちょうど先日まで何も知らずに北九州連続監禁殺人事件を扱った「消された一家」を読んでて、今作は明らかにそれを参考にしてるだけに、最後の着地点に号泣した。

まず前提として、人がこんなふうに不条理なトラップに引っかかるということが前掲書を通じてわかってて、しかも北九州の件では情緒や論理は完全に敗北する。
現実的に、北九州の件が解決したのは偶発的な結果なのだ。

今作でも論理、あるいは一般的な正しさが冒頭で否定され、元部下が死に、妻が洗脳されるという形で完全に玉砕したかのように見える。

だが、最終的にそこに打ち勝つところにカタルシスがある。
完全に死に絶えてもまだ弾を撃ち込もうとするところ、また妻のあの絶叫に、恐怖の本質を捉えていると感じた。

しかし、これはフィクションだから勝てたんだと思う。
犯罪心理学を学んだ元警官だから、ということができてしまう。

それでも「消された一家」を読んだ直後だから救いを感じてしまい、涙が止まらなかった。