西川美和監督作品を観るのはこれで4作品目ですが、全て好き。本作も物語へと引き込む強い力を感じます。きめ細かい描写が、さりげないのですがしっかりとしたアクセントになっていて、静かに物語が進行しても集中が途切れることはありませんでした。
なにより山の風景や、車窓を流れる景色、上空から見るきらびやかな夜の東京、閑散とした波打ち際などなどがとても美しく切り取られていて、これらが作品に奥行きを与えていると思います。
もっくん演じるのが“勝ち組”風でとてもとてもムカムカする主人公。彼の妻がスキー旅行のバス事故で亡くなり、一緒に亡くなってしまった妻の友人の遺族と主人公が家族ぐるみの付き合いをするようになってから少しづつムカムカが取れていく様子を追っていく作品。
とりわけ印象的だったのは、同じ事故で妻を失った夫を演じた竹原ピストルとその息子を演じた藤田健心。パパに歯向かった一悶着シーンには心が締め付けられます。「〜痛いだけだよ」って震える声で睨みつけるところ。
そして何よりも、ほとんど登場することがなかったのに脳裏に焼き付くような強い印象を残したのがモッくん妻を演じた深津絵里。波打ち際で遊ぶ子供たちに駆け寄る亡き妻の幻影は美しすぎて泣きそうになりました。
なんだか私にとっては“馴染む”って言葉がとてもしっくりくるのが西川美和監督の作品。
