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永い言い訳のぴよぴよのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
4.0
冒頭からいきなり愛のなくなった夫婦の思いやりのカケラもない冷めた会話…あまりにもリアルで胸が痛い。

ほんの数分の2人の会話で、うまくいかなくなった夫婦の虚脱感や倦怠感を明確に現してるところが凄い!

何もかも妻のせいにして彼女を責めて自己満足してる夫。それをクールにかわしてる妻。その冷めきった会話を最後に妻は旅立つ。

突然妻を失った本木雅弘演じる夫は、悲しいふりをして普段の生活に戻ろうとする。でも一緒に事故に遭って亡くなった妻の同級生の家族と出会った事から生活が激変。

母を亡くして懸命に生きようとする父・息子・娘の3人を助けようと奮闘する彼に、ようやく優しい気持ちが蘇る。

子役二人の演技が本当に自然で、大人とのやりとりや仕草が生活感溢れてます。お兄ちゃんの健気さは、私でも何とか受験をサポートしてあげたいって思うし、小さな妹を荷台に乗せて坂道を自転車で登りたくなってしまう。

父親役の竹原ピストルも、怖い顔に似合わない優しさがかえって哀しさを醸し出してます。

この家族によって救われる主人公衣笠幸夫(鉄人と同じ名前だとキレる冒頭のシーンが面白かったな)が人間らしい気持ちを取り戻していく過程が素晴らしい。

西川美和って人の心の深層を描いて秀逸。言葉のひとつひとつにドキッとさせられます。

久々にリアルで身近に感じられる邦画の秀作を見ました。
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