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永い言い訳のiのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
2.9
ずっと見たかった。みたいならいつでも見れるじゃん?結果その程度。と言われればそれでお終いなのだが。

先日、陽一役の竹原ピストルさんを拝見する機会があった。彼は自身の出演時間を前にウクレレのような小ぶりな楽器をを鳴らしながら、人目も気にせずに(そもそも目立つようなタイミングではなかったために、気付いてる人自体が少ないようだった)湖へと向かった。その日は会場となるキャンプ場に綿毛のような謎の物体(キノコの胞子だと言う話もあった)が何処からともなく降り続けていた。季節は春だが、その綿毛のような胞子のような物体が、シンシンと雪が降り積もる真冬の様にも思わせた。私は椅子に座り、彼の姿をジッと見つめていた。つい先ほど私の隣を通り過ぎた彼の姿は、どんどんと遠ざかって行く。そして浜辺の前で立ち止まり、声のウォームアップの様なことをしていた。その姿が何とも絵になった。美しかった。失礼だが、そこに立つのは彼でなくとも美しかったと思う。しかし彼に勝手に、もう無許可も無許可で哀愁を感じていた私には、堪らなく良く見えた。写真が特別に、いや全く上手くない私が撮影したとしても「いんじゃん?」程度の写真にはなっていたはずだ。それだけだ。付け加えるとしたら彼はとても良い人らしい。

もしかすると以前も『悪人』か何処かで記述したのかも知れないのだが、深津絵里の魅力に気付いた時に「私は大人になったのだ」と感じられた。叔母に連れらた映画館で『踊る大捜査線』を見ていた当時のちびっ子少年(現在進行形でちびではある)には全く良さが分からなかった。寧ろ、、、的な感情すらあったように思う。今では普通に「ヤバイな」と思う。瀧本幹也さんが撮影した大和ハウスのCMとかリリーさん含めて、ヤバいでしょ。是枝監督も『そして父になる』の撮影を幹也さんに依頼したキッカケが大和ハウスのCMだもんな。

今思い出しても灯役の白鳥玉季が放つ「幸夫くん、がんばって〜」が最高に可愛いよな。あんなん言われたら頑張っちゃうよね。石巻の日和山公園の物見坂もチャリで登り切れちゃうよ。(日和山公園は考え深い場所です)

映画は1人で、部屋に篭って見る私には極めて珍しく、今作はリビングで鑑賞した。キッチンで夕飯を作っている父親が聞き耳を立てていたのか、陽一が即答で「分かりません!」と答えるシーンで笑っていた。僕もつられて笑った。映し鏡みたいだ。君はぼくのともだち〜平井堅さんで『キミはともだち』をお聞きいただきました。(live ver.なのかな?ボンゴみたいなパートがまたいいんだよね〜ポコポコ)つらてではなく同時に笑ったけど。

監督主導なのか、カメラマン主導なのかは素人の私には分からないのだが、陽一が事故を起こすシーンで、追い越し禁止のセンターラインが映し出される演出?はホウ、ホウ、ホウと思った。だけどもやっぱり「これ事故るじゃん」とか「急に事故る」シーンは、漫画でも映画でも怖いよね。『BLUE GIANT』の雪祈がぶっ飛ばされるシーンも、『ワン・デイ 23年のラブストーリー」のエマがぶっ飛ばさるシーンも、『至る終焉』でデヴィッドがぶっ飛ばさるシーンも、、、エトセトラ。私と友人が自転車で横断歩道を渡ってる時に私の後ろで友人が自動車にぶっ飛ばされた時も怖かったな。凄い音がして、「◯◯死んだかも」と思い、怖くて後ろを振り向けなかった。ぶっ飛ばされて、すぐに友達の「痛てー」という声が聞こえてきたから結果的には振り返れたし、何事もなかったけど(轢いた人は自動車で走り去ろうとしていた。そして近くのガソリンスタンドのお兄さんが、自動車に立ちはだかり、ブチ切れていてくださっていた)。まあ映画と関係ないよね。関係なくなっちゃった!結構序盤で映画の話関係なくなっちゃった!序盤どころか1文字目から関係ないけど。でもこれはレビューではなく、日記というか、私の思い出を詰め込むヤーツの側面が強い。いやむしろそれでしかない。だからこれでいいのだ。ビコーズ何故ならフィルマークスには、レビューの非公開がないのだから。

山崎裕さんの撮る映像が好きだ。技術的なこととかなんかそんなのは分からないけど好きだ。心が叫びたがってるんだ。(未見)是枝監督が「何かが生まれる瞬間を撮っていく」。何かの「再現」ではなく「生成」に立ち会うという発想で、映画を撮ろうとした『ワンダフルライフ」の撮影で、出演者のおじい、おばあが何かしゃべりはじめたら、いつの間にか山崎さんがホームビデオのようにカメラを回していて、是枝監督が「フィルム足りなくなるのに、どうすんだよ」って内心思ってたけど、上がってきたものが面白くて、「俺、カッコいいこと言ってたけど、全然わかってなかったわ」と思わされたエピソードとか匠感。

そして最後に。『永い言い訳』の監督である西川美和さんは衣笠祥雄さんのファンであることから、今作の主人公に衣笠幸夫と名付けたらしい(さちおの漢字は違う)。そしてその許可を得るために衣笠さん本人に連絡したところ、快諾され「限りなき挑戦」と書いたサイン色紙をもらったらしい。衣笠さんらしいな。優しさに溢れていて。現役時代の私服姿はガチ怖いけど、解説も決して人を貶さずに、あの優しい声で、もう全人類のお父さんみたいなね。音楽にも詳しくてラジオもしてたけど、ラジオでも優しい。世界記録を持っている偉大なお方なのに、めっちゃ謙虚というかね。ただの音楽好きのおじいみたいでさ。こりゃこんな偉大中の偉大な人物と同姓同名は幸夫君もグレるわなって感じだ笑

R.I.P.衣笠祥雄
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