障害のある方をサポートする方法として、最近の主流になっている考え方はストレングス・モデルだ。
彼の存在を発見し、追い続けた(仕事を投げ捨ててまで)レイニンガーは意図せずして、ストレングス理論に基づいたサポートをしていたことになる。
彼の強み、技能の卓越に気付いた以上、放って置けないと。
他にもケースワーカーや彼の生活をサポートしていた方々の助言もあったろう。
皆彼の才能に気付いていたはずだし、それを認めてあげることが一番の援助になると知っていた。
母親の死後、そのような方たちと共に(その関係性は希薄に見えて実はかなり深く彼の人生と関わりながら)何とか自立して生活する中で描くことを続ける姿を、描いたドキュメンタリー。
実際、美術館の学芸員が大勢だまされたという記録があり、そこが一番の見せどころかも知れないが、障害を抱えて生きる身寄りのない男が、どのように生きていくのか、周囲はどのようにサポートしてゆくべきか。そういう視点で参考になる場面も多々あった。
あまり表情を変えない彼の、展覧会の後の笑顔が印象的。
この笑顔輝く瞬間のための苦しい人生だったのか…
何よりもかけがえないと思わせる。
(2016/1)