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ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償のhuaのレビュー・感想・評価

3.6
一人暮らしをしている学生の身としてありがたいなと感じるもの、ファストファッション。皆様は購入することはありますか?ZARAやH&M、ユニクロなどを代表に、流行的で低価格なお洋服を短スパンで販売するファストファッション業界の真実に迫った、2015年公開のドキュメンタリー『ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』のお話。

安くてファッショナブルなお洋服が購入できるファストファッションを支えているのは、低賃金で働かされているバングラデシュを中心とする地域の労働者たち。2013年にバングラデシュ・ダッカでラナ・プラザという8階建ての「商業ビル」が崩壊し、1100人以上の犠牲者が出たというニュースをご存知でしょうか?実はこのビルは商業ビルとして建設されましたが、実際は縫製工場が入居し、違法に設置された機械たちの振動などに耐えられなかったのだそう。しかもこの工場では労働者たちが建物の危険性を雇い主に訴えたにも関わらず、労働者たちは危険な工場へ戻され数日後この悲惨な事故が起きたというのです。さらに縫製業が主要産業であるカンボジアでは、縫製工場で働く労働者たちが賃上げを要求するデモを行い治安部隊と衝突、犠牲者も出ているそう。

このドキュメンタリーを見て初めに思い浮かんだのはタイラーダーデン。(何回ファイトクラブの話をするんだという話ですが…笑)「自分自身の所有物にお前は支配されている」「そう、我々は消費者だ。ライフスタイルに仕える奴隷」ドキュメンタリーを見ながらタイラーの言葉がちらちら頭をよぎっていました。ブラックマンデーで開店と同時にお店に駆け込んで競争するかのように商品をよく見もせずに棚から奪い取るような人々の姿を俯瞰する映像があり、これがタイラーの視点かと思ってしまいました。(心の中にタイラーを住まわせながらこのドキュメンタリーを見ている人間は中々いないでしょうが…)

資本主義、物質主義の社会の中で、私たちはどのように「消費」していくべきなのでしょうか?そもそも私たちは消費しているのではなくて、華やかで魅力的なファッション広告に踊らされ消費させられているだけなのではないのか?なんてことも考えます。「三方良し」という言葉をご存知でしょうか?三方は「売り手」「買い手」「世間」を指し、つまり企業と消費者が共に満足し、かつ社会貢献もできるのが良い商売であるという近江商人の考えだそうです。石油産業に次いで2番目に環境を汚染している産業であるファッション産業において、持続可能な社会=SDGsを考えていくこと、「三方良し」な商いを行うことは非常に大切なことだと思っています。私個人としては今すぐファストファッションを買うのをやめろ!と言いたいのではなくて、消費者の一人としてファストファッションがどのようにして私たちの手元に届くのか知った上で購入の選択をすべきなのではないかと思います。私がお買い物をするブランドでも最近SDGsの実現に向けて新しいプロジェクトを発足したりと身の回りのブランドでも少しずつ変化はしているように感じています。無知の知とよく言いますが、何事においてもまず認識することで学びは拓けていくんだなと改めて実感した作品でした。
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