巣籠もり坊主

13時間 ベンガジの秘密の兵士の巣籠もり坊主のレビュー・感想・評価

4.5
 キチンと現実のお勉強もしておくべきなのだろうが…作品の元ネタを理解していなくても充分に堪能できたし、自分が戦場(≒戦闘のある状況)には決して出たくないと思えたので大収穫。
 ハリウッドお得意の無敵モードが発動してる人は登場せず、弾丸はズボズボ人体を貫通するし、跳弾・破片でどんどん擦過傷が増えていくし、火事場に飛び込めば火傷もするし気管が焼け髪も焦げていく。母国に残してきているベイビーや愛娘の表情や仕草が愛らしいのに、パパ達はみるみるボロボロになっていくのが悲惨さを引き立てる。デルタだ、海兵隊だとマシンのように鍛えられ訓練されているのにジリ貧に追い込まれていくアメリカ兵に対して、攻め手の素人(…と言うか普通の人達)が武器を手にして数に物を言わせて寄せて来てもほぼ一方的に的にされて撃ち殺されていくのも相当酷い状況。ラストの大立ち回りは、性能による蹂躙vs数量による圧倒みたいな構図だが、どちらの立場も、相手の死をもって自らの生(正義)を獲得するしかなく、そこには対話も主張も無く相互理解の為の行動様式などは一才存在しない。ただただガンサイトの先にある標的(そこに在る敵)を撃つという行為だけが自己を存続させる可能性を生み出すという地獄のような時間。観てるあいだ「無理無理!」の連続でグッタリ疲れた。状況終了後の映像も気怠さと哀しみに満ちていて、救った命が、引き換えとして「奪った命」と「救えなかった命」の総量と折り合わないと言う現実的な描写もバランスが良い方だと思う。
 かなり良い映画でした。
巣籠もり坊主

巣籠もり坊主