GodSpeed楓

ディストラクション・ベイビーズのGodSpeed楓のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

これは、新井英樹作品か?

まるで「ワールド・イズ・マイン」の実写版を観ているかのような錯覚に陥る。享楽主義に見えて不安定な男と、何かを超越した男。無茶苦茶な男二人が女を連れて、暴れ回る。トシモンとマリアが歩いた道には破滅が吹き荒れていたように本作も多大なる被害者は出ているが、何だ、この爽快感と不快感が入り乱れる感情は。鬱屈した感情を解き放ってくれる痛快さと、根底に持っている倫理観がグチャグチャに入り乱れて、変な笑いが止まらない。喧嘩御輿のシーンも、鬱屈した感情がぶつかりあってる事を示唆しているのかもしれない。

また、喧嘩の間が非常に良い。足をすくったり、ヘッドロックで動きを止めたり、上手く当たっていない膝蹴りなど、非常に生々しいのが心拍数を上げてくれる。そんな生々しい暴力にさらされながらも、諦めることなく不屈の精神で立ち上がり、何度も襲いかかりメキメキと強くなっていく姿も、まるで格闘技を観ているようで声を上げてしまう。綺麗なカウンターを食らった後に、同様なカウンターを会得した姿は、まるで「SUGAR」の石川凛のようにも見える。

ゴリゴリに歪んだ向井秀徳サウンドも耳から頭の中を掻き回してくる。冒頭からぶちかましてくるノイジーな楽曲も、柳楽くんの表情からもヒリヒリするような緊張感を生み出してくるのだ。

シンプルにチンピラがハネまわるだけの作品だと思ってはいけない。これは暴力が生み出すカタルシスと、それを楽しんでいる事に伴う罪悪感に揺り動かされるアート作品だ。決して万人受けなどしない。彼らは、思うがまま生きて、望むままに邪悪であったのだ。人間はここまで純粋になれる。

開けてびっくり、玉手箱…浦島太郎やな。
GodSpeed楓

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