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ディストラクション・ベイビーズのERIのレビュー・感想・評価

3.7
ただただ殴り合うだけの映画と聞いていたので、平日の疲れた夜は見れないなと思い、休日の朝ごはん食べながらの鑑賞。(言うまでもないけど朝ごはん食べながら観るような映画ではない)

見終わった瞬間、これ劇場で観たかったなぁ!と高揚した。レビューを見ると賛否両論なんですね。答えも何もないのだけど、映像作品として必ず時代の中でキーとなる作品なのではないかと思う。私は監督・キャスト・スタッフさんのさまざまな挑戦と確固たる覚悟に、かなり魅せられてしまった。

まずなんといっても柳楽優弥さんの圧倒的な存在感とサイコパスな目。柳楽優弥さんは、ただ殴り続けるだけで、ほぼ台詞はない。彼の心情やキャラクターの洞察は、観客に委ねられている。なぜ、彼が喧嘩をし続けるのか。

柳楽優弥という芯を取り囲むように実力派な若手たちが集まっている。村上虹郎、菅田将暉、岡本天音、北村匠海、池松壮亮。そこに小松菜奈。(敬称略)舞台は愛媛県松山市。季節は夏。

オープニングの柳楽優弥さん演じる芦原泰良がただ歩いて背中だけが映ってるシーンが、すでにゾクゾクと怖くてそれだけで不審な違和感があった。そして最後海を見ていた芦原泰良が振り返って警官を仕留めるエンディングのカリスマ性。凄い役者だ。菅田将暉さんが演じる北原裕也は卑怯で女ばかりを殴る。つまり最低なのだ。凡庸すぎる裕也は泰良に便乗することで、何か大きな自分になったような気がして事件を面白がってどんどん大きくし、転落させてゆく。

現実であったらあり得ないのだけど、10代の抱えきれない衝動が、何かをきっかけに爆発し、発露する瞬間。港町の近くで起きる暴力。それにクロスするSNSの社会とリアルな日常が、ぐるぐるになって人間の弱さと凡庸さが露呈する。

キャスト全員良かったなぁ。兄を想い探し続ける村上虹郎さんと、彼を囲む北村匠海さんや同世代とのシーンも良かったんだよなぁ。小松菜奈ちゃんのダメさと生きる強さも良かったし。菅田将暉くんに最後やり返すとこはスカッとします。笑
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