トランスマスター

ディストラクション・ベイビーズのトランスマスターのレビュー・感想・評価

4.0
愛媛県松山市が舞台のバイオレンスムービー
ストーリーはほとんどないのに見入ってしまう映画最近多いですね。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は【往復】。今作は【タコ殴り】。身寄りのいない男兄弟の兄はブルーカラーの喧嘩中毒、弟はスケーター。腕っぷしに自信のある兄は一人で金髪高校生や盛り場でのチンピラなど無差別ストリートファイトを続けていき仲間になった者までその凶暴さを伝播させていくお話です。

◆良い点/注目ポイント
・ストリートファイトがリアルすぎる。基本は掴みと殴りと踏みつけという実践素手ゴロスタイルが、たけしの映画のように痛々しい。特に素手で顔面を殴った時の乾いた音(音効さんは良くあの音のサンプルをゲットしました。)。勝負が1分程度でケリがつくところなど他の映画作品とは明らかに違い過ぎる現実味。複数高校生との高校生が戦意を失いながら主人公に対して共闘しているシーンやチンピラ戦では一人は余裕で傍観、立ち回りの役のジャージ君は耳を掴んだり相手の服をめくりあげて視界を奪ったりなど素人とは違った戦術また細身のスーツのボクサー崩れの本職系などは腕時計を外してからの参戦。カウンターでのKOなど漫画原作のバイオレンス映画とは違ったディテールです。

◆改善点
・途中で加わった菅田将暉のキャラはクソ過ぎる。公園でのストリートファイトで友達がやられているのに参戦しない。商店街では女に無差別通り魔、お爺さんにも暴行など弱いものに徹底的に容赦のない『仮面ライダーW』でした。
・邦画特有の問題点ですが、役者のセリフのボリュームが小さくTVのボリュームを上げると爆音BGMが急襲してくるなど視聴者とご近所さんに優しくない設定です。ふと思ったのですが海外で受賞している邦画やアニメって基本的にセリフのボリュームが大きい気がするので、キャラの感情演出の為にボソボソ小声でしゃべっている作品は実はグローバルスタンダードで損な評価を受けているのかもしれません。せっかく作り込んだ作品がもったいないので小声の時や方言を使用の際には字幕スーパーも欲しいところです。
・スマホを使用している割に主人公の弟とスケーター仲間の髪型・ファッションがポケベル世代のものです。時代考証が現代なのか過去なのか難しいところ。またクラッシュする車も邦画のあるあるなのですが、完全に廃車寸前の古い車種なのも残念。CGでもいいのでその時代の車を使わないと、あれこの車ぶつかるなと事前にわかってしまいます。

◆総括
・現代の精神を病んだバーサーカーの群像劇です。
暴力描写や胸糞の悪い弱い者いじめも含まれているため男性向けです。
【キンボ・スライス】のノングローブのストリートファイト動画のような凄惨さでした。