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ヒトラーの忘れもののkiritoのレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
4.6
【尻拭い】

→意味:他人の失敗などの後始末をすること。

『ヒトラーの忘れもの』。
この邦題の前は実は『地雷と少年兵』という名前が使われていた。

その名前からも明らかな通り、この映画はデンマークの国に残された地雷の処理をさせられた少年兵達の物語である。

ヒトラー政権が残した負の遺産。
それは夥しいほどの地雷という名の兵器。
悲しくも、その処理に回った兵士のほとんどが少年兵というのだから、これが人の尻拭いではなく、一体なんだというのか。

この映画のラストまで見届けて私は鳥肌が立ちっぱなしだった。
映画を見てる時に鳥肌が立つことはそうないが、この映画は体の芯から何かを震えさせる力を持っているらしい。


冒頭にうつる煤で汚れた少年達。
その瞳は物理的には輝いているにも関わらず、とても何かに怯えた目に見える。
視聴者はこの時点では彼らがどこに向かっているのか明らかにされていない。
けれどもきっと彼らは知っているのだ。
この先に逃れる道はないということを。


『死』というものと文字どおり接しなければならない地雷の除去という仕事。
それは日常的に地雷の除去に失敗した仲間が死んでいく環境であり、彼らが生きてかなければならない世界。


ドイツ兵を恨むデンマーク人は、例え子供であっても同様に扱い、およそ人として扱わない。
一方で身近に子供達を指揮することになる1人の軍曹はこの仕事を子供にやらせることにある日から疑問を持ち始める。


中盤の軍曹と兵士の信頼関係とそこに生じる事件。
そして、軍曹と子供達の最後。
後半になるにつれて加速していく物語の展開には息を飲んだ。


子供達には罪はない。
しかし、なぜ彼らが地雷の除去に回らなければならなかったのか?
時代が、人が、あるいは運がそうさせたのかもしれないが、その原因となったのはやはり戦争である。
その歴史を忘れてはならない。


この映画は一昨年の東京国際映画祭でも話題となりましたが、日本での公開は悲しいかな先月であり、しかも小規模公開。残念すぎますね。これは。


去年公開映画の中で自分の中では堂々の1位となりました。


※あけましておめでとうございました!
いつも絡んで頂いている皆々様。
本年もどうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m

2017.1.10
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