うさぎ小天狗

果し合いのうさぎ小天狗のレビュー・感想・評価

果し合い(2015年製作の映画)
3.3
「世間からつまはじきにされていた男が、たったひとり自分を認めてくれた人のために、命をかける」、「その過程で過去の失敗を乗り越えて人生におとしまえをつける」、よくある話なんだけど、仲代達矢演じる主人公が「部屋住み」であるところに特色がある。

「部屋住み」とは、武家社会において「長男が死んだ時の代わり」としてのみ、実家に飼い置かれる次男以降のことである。家父長制社会において家は長男が継ぐので、それ以外の男の子は妻も持てず、仕事にもつけず、独立もできず、漫然と日々を送るしかないのである。

つまり、「江戸時代のニート」が主人公なんである。
ジジイニートが主人公なんだ。

ここにこの映画のターゲットが見えてくる。
「ジジイ+社会との接点がない+昔取った杵柄」……そう、この映画の主人公は、リタイアした団塊世代に感情移入されるようにキャラ付けされている(あるいはそういう原作が持ってこられている)。
そして、そんな「一見役立たずに見える俺」と、「そんな俺は実は超有能(人を斬った経験がある)なので、修学旅行先のホテルでテロリストに監禁された時に大活躍」的な、ラノベストーリーとの相性がバツグンなのである。

時代小説を団塊世代のためのラノベとして消費するトレンドの、手堅く理想的な映像化。
もちろん、それ以上ではないので、世代を超えた感動とかはない。
うさぎ小天狗

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