ベンジャミンサムナー

サム・ペキンパー 情熱と美学のベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

4.0
 「私自身や人生の全てをスクリーンにぶつけた」と冒頭でペキンパー監督本人が語るが、彼の人生を俯瞰して見てみるとまさに彼が撮った映画の主人公を地で行く生き様だったことが分かる。

 周りにどう言われても自分のやり方を曲げない。その先に破滅が待っていると分かってても進んで行く他ない。
 芯が強いとも言えるし、不器用だとも言える。(「俺が女優を苛めてたら止めてくれ」と言ってるそばから女優を罵倒してたエピソードは笑っちゃう)

 彼の映画では、激しいバイオレンスか炸裂するまでが結構ゆったりしているが、これは監督自身が製作陣と揉めて干されていた時期を反映させているからだと思っている。
 
 『ワイルドバンチ』や『わらの犬』、『ガルシアの首』に『戦争のはらわた』。
 それぞれ一本の映画が自身の人生になっている映画監督なんて他にいるだろうか?

 スタッフや俳優にも容赦はなかったが、監督の事を述懐する関係者たちの口ぶりは実に楽しそうである。(特にアーネスト・ボーグナイン)
 多くの敵を作ったが、慕われていた事がうかがえる。
 ペキンパー監督が『ダンディー少佐』を降板させられそうになった時、チャールトン・へストンが「俺はノーギャラでいいからペキンパー監督を降ろすな」と言い放ったエピソードは熱い!

 彼の作品がより味わい深く感じられる。