天下の超かぼちゃ王大将軍

バーニング・オーシャンの天下の超かぼちゃ王大将軍のレビュー・感想・評価

バーニング・オーシャン(2016年製作の映画)
4.5
「双肩に圧し掛かるカネのピラミッド」

2010年4月20日。
メキシコ湾沖合80km、BP社石油掘削施設"ディープウォーター・ホライズン"。

度重なるスケジュール遅延により、圧し掛かる費用に焦ったBP社幹部が、
経費と時間の削減のために一部テスト(セメントチェック)を省略。

しかし、現場の声もあり、念のため減圧試験を行うが、異常値を計測。
BP幹部は誤検知と判断し、作業を推し進める。

結果、油田から天然ガスが逆流し、引火。

"ディープウォーター・ホライズン"は炎に包まれる。

作業員126人中、11人が行方不明、17人が負傷。

湾岸戦争に次ぐ規模での原油流出量事故となった。

本作は、この2010年メキシコ湾原油流出事故をピーター・バーグ監督が映画化したもの。
■「人の作り出したものの恐ろしさ」

ちょっと最近、しんどくて、映画館行くどころか、
映画自体見てなかったんやけど、休みだってのもあって久々に。。

ピーター・バーグ監督の最新作なんで、見たかったんだけど、
休みじゃなかったスルーする勢いだった。

ただ、久々に映画を観て、映画って面白いなぁって思った。

実話系の映画って言っても、ヤ〇ザの映画ではなく、
実際に起きた原油流出事故の映画化。

中身としてはホント、シンプルで、平穏な感じから事故が起きてテンヤワンヤする。

ま、それだけっちゃそれだけ。

ストーリーは無いかもしれない。
けど、そこには人生がある。
そして、人生は"語る"ものではなく、"ある"ものでもある。

そこにリアルな人生があった、と感じられることこそ、
実話系映画にとっては"ストーリー"でもある。

ただ、本作の場合、個々人の人生というのはあまりよく見えてこない。
主人公以外、あんまバックボーンの演出が無いから。

けれど、冒頭から感じるのは、

「人間って、なんつーもん作ってしまうんや」

という、なんつーか、驚愕というか、怖さと言うか。

今まで水上施設を扱った映画はあったけれど、
なんかあるのが当たり前な感じのオブジェクトとしか感じる事は無かった。
爆破シーンとかもあったけどさ。

ただ、本作は冒頭から、なんやろね、怖い。

人間の手の平でカバーできる範囲を圧倒的に超えた施設つーかさ。

いや、改めて見ると、人間て、人間自身がその手で制御しきれないような、
人の肉体の能力を遥かに超えたものを作り出してきてるわけで、
なんやろ、本作の冒頭ではそれを初めて認識したというかさ。

舞台である"ディープウォーター・ホライズン"で、
この後大事故が起きると認識していると、その施設自体が既に手に余ると言うか、
なんつー恐ろしいもんを人は作るんだとね。

だってさ。

よくよく考えて、人が素で潜れない海底のさらに下から、
石油を吸い出そうって発想がもう凄まじいわな。よく考えたらさ。

この施設、大きな船みたいなもんで、浮いてるしさ。

冒頭は、なんか人間、怖いなって思った。

■「揺り籠から"肩に金を徐々に乗せられて、やがて途方もないピラミッドになったまま運び続けて"墓場まで」

もう一個怖いって思った事。

金。

マネー。

この事故は金に始まり、金に終わる。

いや、多分、この事故だけじゃなく、全部が全部、この世の中がそうなんだろうと、
なんかヒシヒシと感じた。

主人公のマイクは技術屋で、現場責任者のジミーとともに、BP社の幹部と激突する。

BP社の幹部、ヴィドリンが作業を進めようとマイクを説得するんやけど、
その話がさ、実は、分からなくは無い。

多分、組織で生きてる社会人は、何となく自分の肩が重くなる話だと思う。

BP社は大きな会社で、多くの金を生み、多くの人たちが中で働いてる。
それぞれが、BP社の枠組みの中で動き続け、金を生む。
だから、それを誰かが止めると、全体に影響があるんだと。

当たり前の話。

だけれど、事故がある前提でその話を聞くと、
肩の重さが怖いと感じた。

このBP社の幹部ヴィドリンの肩にも、
主人公マイクの肩にも、自分の取り分だけじゃない、遥かに大きい重荷が乗ってる。

金だよ。

で、思う。

俺の肩にも乗ってたって。

その規模は莫大で、自分の会社とかいうだけでなく、客とか、もっと大きな流れの中で見ると、
おおよそ一人の人間の肩に乗る規模じゃない額が乗ってる。

だから皆で支えてるんだけど、一人が崩れると、上に乗ったもんはバランスを崩して一気に崩れる。

それが、"責任"であって、皆それに恐怖しながら社会人ってもんになろうとしてる。

でも、本作では、その重さが判断を狂わせ、重大な事故に繋がる。

普通に普段働いてるけど、ふと思ったわけだ。

人が背負うには、背負う金が重すぎる社会になり過ぎてる気がするって。

別に社会批判でもないんだけれど、
よくよく考えたら、重くて怖くなってきた。

聖帝十字陵だよホント。

人間、皆、シュウなんだよ。

金で出来たピラミッド支えてさ、重くて押しつぶされるんだよ。

でも、支えないと生きていけないんだわ。

それで、こんな事故にあって死ぬとか、本末転倒だけど、
人間が作り上げた人間らしさってのはさ、それを是としたルールでさ、
それが社会なんだろな。

怖い。


■「事故の話をしていないがw」

全然、事故の話になってないけどさ、やっぱ見所は事故ではある。

金のピラミッドが崩れたっていう事故をさ、
肩に金の重さ感じながら見る映画だよ。

ちょいちょいさ、風刺もありつつさ。

「権限が無いから判断できない!」とかさ。

死に直面してもさ。

でも分かるんだよ。

この前、職場で人が倒れてさ。

複数社いるフロアの他社の人でさ。

本来、真っ先に救急車呼ばないといけないけどさ、
皆、牽制しあうと言うか、間が生まれたんだわ。

そこにあったのは、多分だよ、俺がそうだったから、
多分他の人も近しい所があったと思うけど、「手続き」なんだよ。

どこにどう筋を通すべきかと、自分が取ろうとする行動は、
手続き的に正しいのか、って、手続きを探そうとする。

この間が、振り返って怖かった。

結果、他の人も動いて、俺も動いて、なんかうまくいったけど、
あの間が、もしかしたら取り返しのつかない事態になってたらと思うと。

近々でその経験もあってかさ、本作、身につまされるというか。

事故の話に戻ろう。

圧巻だよね。今の時代だから出来た映像だわ。

実話系って、個人的にはフィクションより物足りなさってのはあるんよね、実は。

なんだろ、ストーリー的にワンパンチ足りない感じというか。

でも、今は映像が俄然先行するからさ、
パンチの足りなさは映像がカバーするというかさ。

そもそも、今はフィクションでも物語より派手な映像やしね。

ストーリー、全く無いんやけど、
なんやろね、気にせず見れちゃうんだよね。

面白かった。

久々映画見たけど、映画はやっぱり面白いね。

ドラマはちょこちょこ見てるんだけど、
やっぱ、ドラマは面白いまま終わらないからね。

2時間で終わるって枠の中で、完結した面白さってのは、
やっぱ映画でしかないわな。

良かったと思います。

あ、ピーター・バーグ監督の次回作、パトリオット・デイも日本で公開されるみたいで、
劇場で予告見れたから良かった。

全米では公開済みやけど。

ローン・サバイバーから、ずっとマーク・ウォールバーグと組んでるけど、
ええコンビになってきてるんかもね。