子持ちのカイロレン

第七の予言の子持ちのカイロレンのレビュー・感想・評価

第七の予言(1988年製作の映画)
5.0
 例えばエメリッヒの映画でも、大惨事そのものより大惨事が起きる予兆の方が映画としては面白かったりするもので、「第七の予言」は延々とこの予兆だけが続くような、こういうのが好きな人には堪らない映画だと思う。
 とはいってもシャマランの「ハプニング」みたいに空から人が降ってくるような分かりやすい始まり方ではなく、たぶん予備知識なしで観たら最初の30分は何が起きてるのかさっぱり分からないはず。ハイチの死んだ魚、凍った中東の町、西海岸の弁護士夫婦の日常、死刑囚・・・それらがジャック・ニッチェの流麗なスコアとともに描かれる。え、これ何の話?せいぜい、マイケル・ビーンとデミ・ムーアが出てくるので『なんかエロいシーンがありそう』ぐらいの予兆ぐらいしか感じられない。
 やがて物語が進むとどうやら各地で起きている事件は新約聖書の『ヨハネの黙示録』に沿っていて、7つの予言が実現してしまうと世界は破滅する、ということが判明する。デミ・ムーアの妊婦ヌードに気を取られているうちに世界は滅亡の事態に。まるで天才将棋師に気付けば王手をかけられているような見事なシナリオ。世界の終わりはこうやって誰かのヌードに気を取られているうちにゆっくり進んでいくのかもしれない。
 世界滅亡がオカルトチックな絵空事じゃなくなってしまった今、不穏さを増したホラーとしてぜひ見直してほしい。ジェフ・ニコルズの「テイク・シェルター」なんかが好きな人にもお勧め。