前科持ちの両親を憂えている女性が、親と引き離されている妹の面倒を見ながら、家族の再起動を果たそうとする。訳ありファミリーの葛藤劇を描いている、スプラッター・ホラー。
一応のところ、"カニバリズム"のジャンルに入れられている作品だが、露骨な食人描写は登場しない。残酷カットを画面外に逃がす手法が取られており、見世物映画というよりも、心理描写メインのサスペンス路線という趣が強い。
人肉嗜食が再発した母を中心にして、夫の連れ子(実質的なヒロイン)、親の存在を知らされていない次女(ヒロインの妹)、妻を溺愛する夫、という家族構成により物語が進行。特殊な環境で育てられた妹のツンツンした不良少女ぶりが面白い。
「こいつを食べたい!」というハイ・テンションの後に、「獲物を捕まえたぜ!」という恍惚状態に達するところも見応え満点。"頭のおかしな人を映画の中で観ることほど、愉快なことはない"法則が、痛いほどよく分かる作品。