TAK44マグナム

ATARI GAME OVER アタリ ゲームオーバーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.8
真実はそこにあるのか。


「アタリショック」という言葉をご存知だろうか?
ビデオゲーム創成期を支えたアメリカのアタリ社は、第2世代型のロムカセット交換式ゲーム機の「アタリ2600」を発売、当初は苦戦するものの、サードパーティ各社から膨大な数のソフトが供給され、やがてビデオゲームと言えばアタリとまで言われるようになります。
しかし、ソフトの粗悪乱造がたたり(つまりはクソゲーばかりになった)、ついにはアタリ社はこの世から消えてしまう羽目に陥るのです。
これが世に言う「アタリショック」。ビデオゲームの息の根を止めかねない、それほどの事件でした(とは言うものの、海の向こうの話ですし、まだお子様だったので実際には知りませんが)。

このビデオゲーム界の苦境を実質的に救い、現在のゲーム文化の繁栄の礎を築いたのは言うまでもなく日本の任天堂(およびセガ)でありまして、任天堂はアタリ社の失敗を反面教師に、ライセンシーやソフト開発の管理を強化して成功したというわけです。
まあ、後年はクソゲーもたくさん発売されましたが・・・(汗)

話をアタリ社に戻しますと、アタリ2600用のゲームで語り継がれる伝説の存在、それが史上最高のクソゲーと名高い「E.T.」なのであります。
本体もソフトも飛ぶように売れてウハウハだったアタリ社(の株主であるワーナー)は、調子こいて2200万ドルというキチガイじみた金額で映画「E.T.」のゲーム化の権利を獲得します。
で、これをクリスマス商戦に間に合わせるために、上層部は僅か5週間でゲームクリエイターのハワードに作れと命じるのです。
これが仇となり、完成したゲームはあまりにも理不尽な難しさを誇る立派なクソゲーと化してしまいました。
人気映画のゲームとあって売れると踏んでいたアタリ社は数百万本のカセットを生産してクリスマス商戦に臨んでいましたが、クソゲーはクソゲー。期待通りには売れず、超大量の在庫を抱えてしまう結果に・・・

そして、ここからがいよいよ
本作の主題となります。
アタリ社は大量在庫と化した「E.T.」のカセットを廃棄物処理場に何万本も密かに埋めたという噂が流れ、いつしかそれはゲームファンの間で実しやかに語られる都市伝説となっていったのです。

そう、本作はこの都市伝説の真偽を確かめるべく、アラゴモードの処理場から「E.T.」を発掘しようとする者たちの奮闘および当時を知る者へのインタビューを記録した、ビデオゲーム界最大の謎に迫ったドキュメンタリー作品なのであります!

なにしろ世界中に何千万といるであろうビデオゲームファンが長年知りたがってきた謎ですからね、いざ発掘本番となると、遥か遠くからはるばる見学にやってくるファンがメチャクチャ多くて驚きます。
田舎の廃棄物処理場に、ゲームキャラ柄のTシャツを着たオヤジたちがゾロゾロと集まってくる図はやはり特殊!
ものすごい砂嵐にもかかわらず、その歴史的瞬間を見逃さまいとジッと待つその姿は、所謂ヒマなオタクにしか見えませんが何故か感動的だったり。

特に、「戦犯」とされて不遇な扱いをされてきたクリエイターのハワードは自らの人生に楔をうつために参加しますが、発掘の結果を目の当たりにした彼の言葉は胸を打ちます。


「アタリ2600」と言えば、「E.T.」の監督でもあるスティーブン・スピルバーグが撮った、スーパーオタクが仮想世界を救うオタクカルチャーの総本山的傑作「レディ・プレイヤー1」でも重要すぎるファクターとして登場しますが、本作にはスピルバーグも登場します。
また、「レディ・プレイヤー1」の原作である小説「ゲームウォーズ」の作者アーネスト・クラインは重度のオタクなので、当然のようにデロリアンにE.T.人形を載せて颯爽と駆けつけるのでした。
「私はオタクではなく、熱狂者なんだ」などと訳の分からない事を言っていましたが、大丈夫、あなたは完全なるオタクです!

更に、本作の監督は「レディ・プレイヤー1」の脚本を担当したザック・ペンだったりします。
そんなわけで、「レディ・プレイヤー1」で「アタリ」に興味をもたれた方は特に必見でしょう!
(会社のロゴマークだけなら「ブレードランナー2049」にも登場)

はたして「E.T.」は「ビデオゲームの墓場」から発見されるのか否か?
いま、あなたは歴史の目撃者になる!