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山口組三代目の東京キネマのレビュー・感想・評価

山口組三代目(1973年製作の映画)
3.5
公開は1973年の夏。 『仁義なき・・・』の半年後です。 なので『ゴッドファーザー』公開の約1年後ということになります。 「『ゴッドファーザー』が好きな岡田は、「日本で当てはめるなら山口組だなと考え、これをやるのは自分しかない」と思い立ち、直接山口組の田岡一雄組長と交渉し映画化の約束を取りつけて『山口組三代目』(1973年公開)を製作した。」(Wikipedia)とのことなので、パクったことを隠しもしていません。(とは言っても、原作はあくまで『田岡一雄自伝』(1973年10月刊)ですが・・・)

当然ながら、各方面から製作中止の要求も多かったらしいのですが、そこは岡田茂、「新聞記者を大勢集めた前で「『ゴッドファーザー』がアメリカで出来て、日本でなぜ田岡一雄伝をやってはいけないんだ。 説明してくれ」などと反論したことにより、さらに批判が増した。」とありますので、この時代、何のこれしきで強行突破できたんですねえ。

現役ヤクザの大親分が原作で、おまけに映画のプロデューサーがその息子ときたら、これ、当時のアメリカでも製作できなかったと思いますが・・・。それに、ヴィトー・コルレオーネって架空の人物ですよ? 解ってます? って突っ込む人も居なかったのかしらねえ・・・(笑)

まあ、そういった話はさて置き。 映画の話で言えば、『仁義なき・・・』より遥かに好きです。 任侠道がしっかり描けていますし、それまでのパターン化したプロットと違って(恐らく、自伝が原作だからでしょうが)、 人間関係が複雑で、義理人情だけでなく欲のジレンマもあって、魅力的なドラマになっています。 それにしても、当時の役者陣はいいですねえ。 丹波哲郎、高倉健、水島道太郎、待田京介などなど、存在感が今の役者とは格段に違いますよ。

岡田茂は「後にも先にも宣伝も何もしないで、あんなバカ当たりした映画はなかった」と言ったくらいですから、『仁義なき・・・』より遥かに数字は良かったようですが、まあ、世相もあって(或いは、『仁義なき・・・』の後評判ゆえか)、この映画はその後、忘れ去られました。 勝手な想像ですが、恐らくこの年くらいから映画館に通う観客層が大分代わってしまったように思いますが、どの道、こういったリプレイスメントを続けていたら、いつかは観客は来なくなりますわね・・・。
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