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レディ・プレイヤー1のnetfilmsのレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
4.0
 2045年という遠くない未来、人々は貧困に喘いでいる。世界的な人口増加による温暖化現象と食糧危機、飢饉。貧富の差はますます激しくなり、大半の人々はスラムで暮らしていた。グレーがかった世界の中で、剥き出しになった鉄筋の階段とトレーラーハウスを積み上げられた世界で暮らす未来人の姿は実に衝撃的に見える。だが冒頭からVan Halenの『Jump』の牧歌的なメロディが流れる作品は、その灰色がかった世界を少年・少女たちが鮮やかに崩しにかかる。VR(バーチャル・リアリティ)専用の世界「オアシス」は貧しい人々にとって楽園であり、ゴーグル一つで全ての夢が実現する自由空間だが、ハードな現実世界と夢のようなバーチャル世界との間は厳重に仕切られている。ある日、オアシスの生みの親であるジェームズ・ドノヴァン・ハリデー(マーク・ライランス)が亡くなり、彼の遺言が全世界に発信された。「オアシスに隠された3つの謎を解いた者には、56兆円もの財産とオアシスの全権利を与える」。その夢に沸き立った17歳のウェイド(タイ・シェリダン)はすぐにこのアドベンチャーに挑戦する。幼い頃に両親を亡くし、叔母とその恋人と暮らす孤独な少年の姿は、80年代のスピルバーグ映画の主人公そのもので、永遠のジュブナイル映画としての魅力を讃えている。

 世界規模で信奉者の多いVRのプレイヤーが、実は近くにいる同世代ばかりだったというのは多少辻褄合わせのきらいはあるものの、映画、ゲーム、特撮、アニメ、音楽などの日米のPOPカルチャーの洪水にはやはり抗えない。映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『グーニーズ』のような80年代の王道物語を踏襲し、縦軸に据えながら、横軸としてメタ・レベル的に記号的引用を散りばめる。キング・コングやメカゴジラ、アイアン・ジャイアントやRX-78-2ガンダムらが入り乱れる展開は問答無用の素晴らしさだが、その中でも特筆すべきなのは、2つ目のミッションで飛び出したスタンリー・キューブリックの『シャイニング』の引用だろう。『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のピンク色の球体同様に、ここでは黄色いボールがエイチ(リナ・ウェイス)の興味を引くように部屋の奥へと導く。グレディの双子や237号室の女の登場場面は実に生き生きとしている。主要キャラクターで三船敏郎が登場するのも、『1941』での起用へのせめてもの罪滅ぼしだろう。5人の少年・少女の前に立ちはだかるノーラン・ソレント(ベン・メンデルソーン)の人物造形は、心なしかジョン・ヒューズの『ブレックファスト・クラブ』リチャード・ヴァーノン(ポール・グリーソン)を彷彿とさせる。とにかく一度観ただけでは細かい部分まではほとんど判別出来ない、何度観ても繰り返し楽しめる内容である。
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