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レディ・プレイヤー1のshingoのレビュー・感想・評価

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
2.4
本作を鑑賞してあらためてスピルバーグの偉大さを痛感すると同時に複雑な心境にもなった。

社会的、政治的な要素は決して表面に出さず、徹底して娯楽映画に拘った本作。その映像面のクオリティの高さはスピルバーグだから間違いないというややファナティックな感情も吐露してしまうぐらい安定して観られる。80年代のポップカルチャーの膨大なオマージュにしても、これらの著作権を獲得するのはスピルバーグ並みの名声があって初めて可能なことだろう。

なので本作はスピルバーグでなければ決して撮れない作品であり、これほど自分の役割に対して意識的な監督はいないと感じた。だがそれが映画として優れているかというと別問題。

まず本作のプロットが稚拙。仮想世界で生きるオタクが現実世界でどう生きるかという現代社会によくある葛藤をテーマにしているが、何故今さらこんなありふれた内容をスピルバーグが撮らなければならなかったのか。この内容なら2045年という近未来を舞台にする必要性も感じない。現代が舞台でも十分通じるテーマである。

それと日本に対してやり過ぎなくらいに感じるサービス精神。スピルバーグは親日家でもあるので単純に好意として受け止めるべきなのかも知れないが、これが日本に媚びた「餌あげよう演出」に感じてしまう。スピルバーグにそんな意図は無くても他作品のオマージュはもっと淡々とスマートにやって欲しい。某ゲームの技を繰り出す演出とか流石に引いてしまった。

ただ良かった点はこの仮想世界の創始者であるハリデーという人物の描写。スピルバーグ自身を思わせる部分も多い人物だが具体的な正体は明かされない。だがラストで「あなたは誰?」と問われ、カメラ目線で「私のゲームで遊んでくれてありがとう」とだけ答える。この瞬間だけは確実にスピルバーグ自身になるというこのさりげない演出には感動。

でも総合的にはやはり楽しめずテンポ良く進むが140分は長かった。インディ・ジョーンズ5に期待。
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