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素晴らしきかな、人生のKentaCのレビュー・感想・評価

素晴らしきかな、人生(2016年製作の映画)
3.9
2年前に6才の娘を失ったことで人生に絶望し生きる気力を失ったハワードを、会社の同僚であり友人である3人が心配し、役者3人を雇ってある計画を立て、再び生きる気力を取り戻させようとする物語。

大切な存在を失い悲嘆に暮れる人間が、どうやってその事実と向き合い、抱え、生きていくか…という「喪の作業」について、じっくり丁寧に描かれた物語で、思った以上にシリアスな作品になっていました。
このあたり、切り口や主人公の抑制具合は違えど、『ドライブ・マイ・カー』とも通ずるテーマかと思います。

深い悲しみを抱えて生きる主人公が全編に渡り描かれていて、周りが行う働きかけはあくまできっかけにすぎず、最終的に向き合うかどうかは本人次第で簡単なことではない、というそのあたりの描き方のリアルさが非常に良かったです(トントン拍子に前を向き元気を取り戻していく、といったご都合主義的展開ではなく)。
そして絶望を体現するウィル・スミスの演技もまたとても見応えありです。
また、後半に、え?そういうこと!?と驚く展開も待っていて、最後の余韻含めてしっかりこの映画の世界に浸れました。

残念すぎるのは、まったく作品の本質を捉えていない邦題と、元々はなかった謎のキラキラとリボンがかかった日本版パッケージ…
この作品に興味ある方は、
それらに是非惑わされることなく、
じんわりと心に沁みるヒューマンドラマに浸ってみてください。
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