享楽

ザ・ギフトの享楽のレビュー・感想・評価

ザ・ギフト(2015年製作の映画)
4.5
・物から始まる贈り物から一転、贈り物の意味が拡散し我々は関係性を持つことが何らかの相互の贈り合いであることを知り、復讐という概念の贈り物が念頭に浮かんだとき、カタルシスは炸裂する。
—結論から言うと傑作だ。
冒頭においては、引っ越してきたサイモンとロビン夫妻が夫の高校時代の旧友であるゴードンに出会い、彼らが親交を深めようとする様が見て取れるが、勘の鋭い者ならすぐ察しがつくように、最初の夕食会でゴードンはサイモンの幸福な日々を執拗に言祝ぐ。もはやその裏である嫉妬の強さが我々客観的な視点を持つ者から見て取れるのだが—は、これからこの三者関係が全く建設的なものにならないことを示唆しており、矢継ぎ早に不穏な空気を生むこととなる。
・皮肉にも、欠陥ゆえの同情心がやがて関係性の幻想が幻想であることを曝しだしてしまい、夫婦関係は崩壊へと至る。
序盤→ゴードンからサイモンへの祝福のギフト
中盤→サイモンからゴードンへの関係性の切断のギフト(メタレベルではサイモンから妻への嘘のギフト)
終盤→ゴードンからサイモンへの復讐のギフト(と並行して中盤におけるメタレベルが顕在化し妻からサイモンへの関係性の切断のギフト)それに加えゴードンはサイモンに対して関係性の修復機会というギフトを与えていたのにも関わらず彼はそれを拒否してしまったがゆえに客観的にみて負のギフトという産物が生成されてしまったという見事な展開。
「お前が過去を忘れても、過去はお前を忘れない」
目は真実を目撃し得るが、全てを語るわけではない。
ゆえに、嘘が嘘であるという真実へと転換するとき、深い不信感が生まれる。という曖昧な三段論法が成立しそうだ。
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