うふふふふふふふ。
全面ガラス張りの向こうに佇むのは、目が穴ぼこになったジョエル・エドガートン。
こわい。
こわいよ。
夢に出るお顔だよ。
穴ぼこと思うのはわたしだけかと不安だったけど、仲良しさんも“空洞”と言っていたので安心した。
じわりじわりと心を蝕んでいく気味の悪さが骨の髄まで侵食していくようで、たまらなく嬉しいし、たまらなく気持ちいい。
今ベランダへ続く窓のカーテンをあけたら、絶対にジョエル・エドガートンがこちらを見て立っているだろう。今わたしが振り返れば、至近距離で穴ぼこを覗けるだろう。
うふふふふふふふ。
ゾクゾクが止まらない。
あと1つ、ゾクゾクすることがある。
たまに驚かされるテレビからの大きい音で、階下の初老が怒鳴り込んで来ないかだ。
わたしが人参の千切りをする時、必ず彼はやって来る。それが、晴れた昼下がりだろうと、静まり返った深夜2時だろうと。
ジョエル・エドガートンの穴ぼこにゾワゾワしながら、玄関のピンポンに怯えている。
わたしは今、生きている。
翌朝、目玉が真紅になった。「顔面ホラー」の称号をいただきつつ病院へ行ったら、結膜下出血とのこと。
間違いなく穴ぼこの呪いだ。