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セトウツミのマーチのレビュー・感想・評価

セトウツミ(2016年製作の映画)
4.4
《私の青春回顧録》

【レビュー】
放課後。
猫🐈。
ピエロ🤡。
関西弁。
シュール。
間。
青春。
花火🎇🎆。
パラシュート。
火。
くだらない会話。
先輩。
男子。
女子。
母。
父。
変なおじさん。
徘徊老人。
理屈。
馬鹿。
ハエ。
食虫植物。
川。
カレー🍛。
ガチャポン。
誕生日🎂。
死。
お盆。
寺。
ヒョウ柄。
大阪のおばちゃん。
塾。
季節。
春。
夏。
秋。
冬。
人。
バイク🛵。
車🚗。
自転車🚲。
メール✉️。
LINE。
ガラケー。
スマホ📱。
嫉妬。
笑い。
怒り。
悲しみ。

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喧騒から離れて気の合う友達と話し続けるだけの時間。単なる暇潰し。

しかし、それこそが毎日多少の変化はあっても終わりの見えない繰り返しの日々の中で見つけた休息と楽しみのひととき。
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汗かいて走り回る💦〈青春〉があるとするなら、ただ毎日しょうもないことを放課後に親友と2人で語り合うだけの〈青春〉があってもいいのではないか。

ウツミがポロッと心の内でこぼす青春放課後論に、自分の学生時代を重ねて激しく共感していた。学生時代に毎日汗水垂らして部活一直線で頑張っていた人たちは、多分この作品を〔つまらない〕と感じると思う(これは偏見でもありますけどね…すいません)。それでも全然構わないけど、そういうタイプの人は暗に否定するのではなく、“こういう放課後の使い方もあったんだな”とか“こんな青春のカタチもあるんだな”程度に軽く受け流して欲しい。

それだけ自分が生きた《青春》(学生時代)に起因して感情の起伏が齎される作品であり、人によって観方も感じ方も全然違ったものにたどり着く作品であると思う。
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また関西が舞台なのが良くて、おそらく大阪が舞台なんだと思うけど、露骨にヒョウ柄のおばちゃん出てくるし、関西弁でコントか漫才のような会話劇が繰り広げられるから面白い。

放課後特有の開放感と何気ない日々の休息が生きる活力になることもあるし、会話の中で偶にゲーム的なことをしてみたりだとか、誰かの愚痴の言ったりだとか、恋愛の話をしたりだとか、凄く共感できる! 学生時代自分もよく放課後友達と教室に残って話したりしていたのでその楽しさが凄く良く分かるし、話し始めの方で出てきたワードを後で“ここぞ”という時に使って、友達同士で盛り上がり、「してやった感」を味わうのが楽しかったな〜としみじみ回想したりもしました…

背景もいい。あくまでセトとウツミを際立たせるために控えめに演出されていて、その中でも爆音のバイクだったり、ペットの散歩だったり、ごく日常の“あるある”や“淑やかさ”がある。バックで一連の別エピソードを繰り広げていても面白いかなと思ったけれど、おそらく目立って邪魔になるだけで、セトとウツミの前ではそれすらも水泡に帰すと思われるので、切り取り方としては正解だったのかも。

原作との関連だろうけど、75分という短い尺の中でオムニバス形式にして、短編数コマで構成されているのも観易くていいし、極々くだらないアホみたいな会話なのに、面白くて終始笑っていたし、ボソっとツッコンでいた気がする…これは関西人の性です。
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いつの間にか、自分もこの映画の一員として溶け込んでいる様な気にさせてくれるから面白い。

とにかくこの至極くだらない映画を、
私は《傑作》と呼ぶことにする。


【p.s.】
原作は未見ですが、セトは凄い正直でバカだし、ウツミは理屈っぽくて寡黙でクール気取ってるけど、その関係性の絶妙さがやっぱり大好きで、始め敢えて棒演技で演じていたであろう池松壮亮さんの徐々にウツミの性格を掘り下げる演技にも驚いたし、菅田さんは間違いなく演技上手いので安心して観てられるし、中条あやみさん演じる一期の可愛さとミステリアスな感じが作品の中のヒロインとして成功していて自分の人生体験と重ねてかなり楽しめました!

「一期」の名前のくだりで、妹には「一会」ってつけるお寺さんの親のネーミングセンスには脱帽しました…笑

観た時間帯も作中の時間帯とほぼ同じだし、気分的に余裕があったのも傑作だと感じた要因の一つだと思います。イライラしてる時とかに観たら余計にイライラしてたと思うし…あと放課後に友達と映画の話をしてて楽しかったこととかがフラッシュバックしてきたから嬉しくなったのもあると思います。

短くてサクッと観れるので、興味のある方は気分的に余裕がある時に、是非。

【映画情報】
上映時間:75分
2016年 日本/監督 大森立嗣/原作 此元和津也/キャスト 池松壮亮/菅田将暉/中条あやみ/鈴木卓爾/成田瑛基/岡山天音/宇野祥平/関西の男子高校生2人が放課後に何となく会話するだけという異色さで話題の、此元和津也による人気漫画を実写映画化。タイトルは瀬戸と内海という主人公2人の名前を組み合わせたもので、彼らが交わす嘲笑的でユーモアを織り交ぜた掛け合いが展開していく。
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