西部の冴え渡る空の下、乾いた風の中に立ち込める砂埃の匂いとみなぎるエナジーがスクリーンを突き抜けてくるかのような作品。男臭くて強者ぞろいの7人のアウトローの戦いぶりに酔いしれた。いくら寄せ集め集団とはいえ、時代考証的に、こうまで人種の坩堝になるか?というツッコミどころも、男達の熱気溢れる戦いっぷりの前にはご愛嬌として目を瞑ろう(笑)。普段ほとんど見ないジャンルだけれど見て大正解だった。7人がそれぞれの味を醸し出しつつ、漏れ無くカッコいいのである。
リーダーの器と格を感じさせるデンゼルワシントンの佇まい。お調子者の振舞いと流麗な銃さばきのギャップで魅せるクリスプラット、PTSDに苛まれる伝説の狙撃手イーサン・ホーク、異彩を放つインディアン役の俳優の怪演。そんな人種も戦い方も異なる文字通りのダイバーシティ、カッコ良さのエキシビションの中、群を抜くカッコ良さを見せつけたのはイ・ビョンホン。 居並ぶハリウッド俳優に負けない独特な存在感。しなやかな身のこなしから繰り出されるナイフに 敵を射抜くような眼差し。寡黙で凄腕、そして決闘シーン。これは紛れもなく「七人の侍」の久蔵の立ち位置だ! テンションが一気に上がった。
本作は「七人の侍」「 荒野の7人」を下敷きとした作品。荒野の7人は未鑑賞だが七人の侍は今年に入って観たこともありいまだ鮮烈な印象が刻まれている。農民に請われ、彼らの平穏な生活を取り戻すために人集めをし、戦いに身を投じるという基本プロットは「七人の侍」と同じ。そしてどちらも躍動感に溢れおもしろいのは間違いない。だが、物語のベースとしているというだけで、2つの作品は趣も心象も異なる別物だと思う。
七人の侍のリーダー 勘兵衛の 「この飯、おろそかには食わぬぞ」に滲み出る武士の覚悟や心意気。「おめえら、百姓をなんだと思ってたんだ!百姓ぐらい悪びれた生き物はないんだぜ」と涙を浮かべて絶叫する百姓出身の菊千代の思い。「七人の侍」の日本的人情味が散りばめられた物語に比べると、本作は 情は情でもどこかニヒルな空気が漂い、そのせいかよりエンタメ色が色濃く出ているように思う。それでいて この人種構成は 多様な移民から成るアメリカという国の投影にも見え、生き残った戦士の顔触れはアメリカが向かおうとしている方向へ一石を投じ警鐘を鳴らしているかのようにも感じてしまうのである。
終盤 込められた辛辣なメッセージ性を感じながらも、前のめりで観てしまう 痺れるほどのカッコ良さは最後まで途切れることはなかった。散り際まで絵になる男達。唯一の違和感は「私怨」。個人的思いとしては、これが ”マグニフィセント(magnificent) ” な7人による聖戦であるならば、7人の立ち位置は皆同じであり正義の名の元に志を1つにして戦う 同志であってほしかった。