このレビューはネタバレを含みます
公開前のバーベンハイマーのミームに関するワーナーの対応に少々モヤモヤしつつも、形だけだとしても一応謝罪文が出たこと、また何よりもグレタ監督が「ワーナーが謝罪文を出したことには意味がある」とコメントしていたことを受けて見ることを決めた。(あと今回の件でハリウッドの予算規模が大きい映画については監督などがマーケティングに関与できないということを初めて知った)
映画の内容としてはよくできた初心者向けフェミニズム映画という印象で女性中心主義的なバービーランドと男性中心主義的な現実世界を対照的に描くことで、現在の社会構造が抱える男性側、そして女性側の問題を炙り出していたのは非常にうまかった。同時に問題が容易には解決されない状態で映画が終わったことも私は個人的にはありだと思った。マジカルに差別や問題が一瞬で解決することはない。差別を解消するには日々の生活をしながらも忍耐強く行動していくしかない。あらゆることが戯画的に描かれたこの映画が妙にリアリティのある形で終わったことは、社会との連続性を示している気がした。
ただ一方でこの映画がホワイトフェミニズムでありインターセクショナリティはあまり描かれていないという批判も非常にわかる。私は特にこの映画が主に“男性”と“女性”の二項対立的な描写ばかりでノンバイナリーや(当事者は参加していたらしいが)トランスジェンダーの存在が不可視化されていることが気になった。あまりにも分かりやすく問題を描いたために、その分取りこぼしてしまったものもある。映画の出来が良いからこそ、この点が残念でならない。