カツマ

アイリッシュマンのカツマのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.3
マーティン・スコセッシの凝縮された魂が3時間半という大ボリュームに蓄積された、一代ギャング絵巻がついについに巨大な物語となって完成!ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシというギャング映画のスター俳優達を一堂に集結させた夢のようなアメリカンギャングドリームは、実在した一人の男に焦点を当てた栄枯盛衰のドラマであった。スコセッシのやりたいこと、表現したいことが大いにブチまけられた渾身の大作がここに降誕。人生を散らす男たちによる冷徹な銃弾が淡々と闇を射抜く物語だ。

すったもんだの末にNetflixが配給権を獲得した本作を、東京国際映画祭最終日の限定公開にて鑑賞!スコセッシが長年タッグを組んできたロバート・デ・ニーロとの阿吽の呼吸を画面上に息づかせ、主演である彼へのリスペクトをも感じさせるほど、豪華キャストの中にあってもデ・ニーロを浮き上がらせるかのような作品となっていた。ギャング映画でデ・ニーロ&パチーノを共演させ、そこに『グッド・フェローズ』でお馴染みジョー・ペシまでねじ込んでくるというオールスターなコラボレーションを実現し、スコセッシのギャング映画の殿堂に新たにその名を刻む作品だ。

〜あらすじ〜

年老いたフランク・シーランは老人ホームで過去のとある出来事について滔々と話し始めた。彼はギャングの世界に身を投じた元殺し屋であったが、そこに至るまでには様々なドラマが待ち受けていた。
時間は遡る。かつてフランクは戦争を経験した後、精肉工場のトラック運転手として勤務していた。常に穏やかで人当たりの良いフランクは裏社会の人間にも気に入られ、とある機会に裏社会のボス、ラッセル・ブファリーノと対面を果たす。次第にラッセルから仕事を請け負うようになったフランクは、金貸しの用心棒をしながら暗殺にも手を染めるようになる。ラッセルからの信頼を得て、ギャングの世界でもその名を少しずつ知られるようになった彼は、新たな取引相手として全米トラック運転組合のボスであり、労働者たちの希望の星でもあるジミー・ホッファと出会うことになる。フランクはジミーと家族ぐるみの付き合いをするようになり、徐々に表の世界でもその名声を増していくことになるのだが・・。

〜見どころと感想〜

この作品はチャールズ・ブラントが2004年に発売したノンフィクション小説『I Heard You Paint Houses』を題材としており、登場人物は皆実在の人物である。ジミー・ホッファの事件を元ネタにした映画は他にもいくつか作られているが、この映画はその事件に対してかなり詳細に切り込んだ一例だと言えるだろう。登場人物がやたらと多く、時系列も3本くらいに渡るため序盤はひたすらに混乱する映画ではあるが、メインの数人だけしっかり頭に記憶できていればさほど支障はないだろう。

上映時間は210分ということで長尺作品の多いスコセッシ作品の中でも特に特大サイズ。しかもダラダラするシーンも多いため、それなりに忍耐力は求められる。とはいえ、名優たちが恐らくアドリブだろうと思われるシーンでどんどんテープの長さを伸ばしていっても、それをそのまま残してしまう大らかさがこの映画にはあり、物語が進むにつれてそれがとても魅力的に思えてきてしまうのだった。

アイリッシュマンことフランク・シーランへの人生へとスポットライトを当てた一大叙事詩であり、人間一人の人生を本気で描いたらこうなるんだというスコセッシの気概を大いに感じることができた。彼の表現したいことが膨張してゴム風船のように弾け飛んだ末に生まれた、アメリカの闇とそこに関わった男たちを憧憬のような目線で見守っていくような作品でした。

〜あとがき〜

スコセッシ作品は絶対に劇場で観たいと思っていたので、チケット戦争に何とか勝利して晴れて観ることができました。さすがに210分は長かった!ネトフリは相当スコセッシに自由を与えたんだろうなと分かるくらい、遊びに思えるシーンが多くて(多分相当数のアドリブがぶっ込まれていると思われます笑)、そんなところにも映画人たちの余裕と貫禄を感じることができました。

なかなかに観る人を選びそうな作品ではありますが、ギャング映画もここまで来たのかという作家性の高い作品なので、多くの映画ファンから激賞されるような気がします。自分も見終わった後にジワジワ来ていて、配信でもう一回観るのも面白いかも、とかすでに思っているくらいでした(笑)