ヘンリークリンクル

アイリッシュマンのヘンリークリンクルのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
5.0
ギャングものだけれどグッドフェローズでもカジノでもない
だからといってタクシードライバーかキングオブコメディかと言ったら違う
部分的に類似している場面を見つけ出すこともできるけれども、これはまったく新しいスコセッシ作品

作品のトーンは暴力的にも関わらず異様なほどゆったり
グッドフェローズとそう変わらない時代が舞台な筈なのに音楽で暴力を彩ったりはしない
むしろこの映画の暴力には退廃すら感じる

かといってお堅い映画ではなく、劇場で声を出して笑っているのが頻繁に聞こえるほどユーモアに溢れてる

私は今作がヴィスコンティの「山猫」やフェリーニの「8 1/2」に値する作品だと思っている
作家のパーソナルでマスターピースな作品であるという意味でも評価の部分でもだ

そして本作にどうしようもなくスコセッシを感じてしまったのは意図せず神の問いに誰よりも近づいていく姿だ
それは私の生涯ベスト1映画のレイジングブルでもそうだった
信仰も聖書も読んだことのない下劣で暴力的な世界の愚か者が、恐らくは聖職者よりも神に近づいている