ノラネコの呑んで観るシネマ

アイリッシュマンのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.6
絶大な権力を振るいながら、1975年に失踪した全米トラック運転手組合委員長、ジミー・ホッファ。
彼を暗殺したのは自分だと、晩年になって告白した、“アイリッシュマン”ことフランク・シーランの物語。
実に210分の大長編だが、アメリカ史好きにはたまらなく面白い大河ミステリ。
映画は死の直前のフランクの独白、ホッファの失踪直前の1975年のフランクとマフィアのボス、ラッセル・ブファリーノの“集金旅行”、そして若き日のフランクがラッセルとホッファに出会い、次第に組合とマフィア双方で頭角をあらわす、三つの時系列が平行に語られる構造。
ホッファの最期は諸説あって、これもあくまでもフランクがそう言ってるだけで裏は取れてないものの、組合員の年金資金を狙ったマフィアが労組と癒着し、アメリカ現代史の利権と権力の一部を担っていたことを、リアリティたっぷりに描き出す。
本作の白眉は、やはりデニーロの演じたキャラクターで、イタリアンマフィアの主流でないアイルランド系でありながら、彼らの殺し屋となり、なおかつホッファの友人で、労組の幹部にもなるという、ややこしい立場。
どっぷりインサイダーで、同時にアウトサイダーなんだな。
しかし、これは評価が難しい映画だ。
本当にこの尺が必要だったのか?と言えば、例えば中盤のあるキャラクターに関するエピソードは、丸ごとカットしても充分成立する。
だが、そのエピソードそのものはすこぶる面白いのだ。
これはやはり、配信前提だから出来た作品なのだろう。
出てくる人が皆ろくな死に方してないのが、因果応報と人の業を感じる。
フランクも結局、一番守りたかったものを失ってしまった訳だし。
そりゃ幼い子が、目の前で暴力を見せつけられりゃ引くわ。
スコセッシ流の、アメリカンクロニクルのダークサイド。
ブログ記事:
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