タケオ

アイリッシュマンのタケオのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.4
ロバート•デ•ニーロ、アル•パチーノ、ジョー•ペシ、ハーヴェイ・カイテルという"最強のカード"を揃えて製作された、マーティン•スコセッシの最新作『アイリッシュマン』(19年)。全米トラック運転組合の一員として働きながらも、マフィアの元で犯罪行為に手を染めてきたフランク•シーランという1人の男の視点から、第二次世界大戦後のアメリカの裏社会を描き出す。作品のテーマ自体は「盛者必衰」というスコセッシが過去に何度も扱ってきたものだが、『グッドフェローズ』(90年)や『ウルフ•オブ•ウォールストリート』(13年)のようなパワフルさと『ディパーデット』(06年)や『沈黙-サイレンス-』(16年)のような厳然さが、この一本の中でバランスを欠くことなく見事に共存している。淡々とした語り口の中で時折炸裂する生々しいバイオレンス描写と、不謹慎ながらも笑いを誘うブラック•ジョークがこれでもかと冴え渡り、210分という長尺を全く感じさせない構成の妙にも脱帽だ。仁義とエゴの狭間でもがき苦しみ、激動の時代に翻弄される男たちの貫禄と哀愁に酔いしれる<至高の映画体験>がここにある。死すべき瞬間を見失った者に訪れるあまりにも無情で巨大な'虚無感'を鑑賞者に叩きつけるラストショット。その残酷さと美しさは、正に巨匠マーティン•スコセッシの'集大成'である。
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