みかぽん

アイリッシュマンのみかぽんのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.9
隆盛を誇ったイタリアン・マフィア。そしてこれが衰退して行く時代の流れを、ひとりのアイリッシュマン(フランク/デニーロ)の人生に重ねて語られて行く物語。

かつてストライキが法律で禁じられていた時代、権利を訴える労働者に対し、雇用主側はマフィアを雇って締め上げる歴史があった。
これに対し、不屈の精神で組合を作り上げる…までは立派な功績…のホッファ(パチーノ)だったが、その後に彼は組合を私物化し、維持運営のために今度は自らがマフィアと組むようになった。
こうして彼は逮捕。しかし出所をきっかけに再び権力の座への返り咲きを目指す執着に対し、マフィアは次第にその存在を持て余し始める。

マフィアは人の心の弱さという影に寄り沿うあだ花のようだ。世の中が整い、誰も彼らを必要としなくなれば次第にその勢力は衰退して行くのだが、表社会の個人店主、巨大労働組合、果ては政治の中にまで、マフィアは静かに巣食い、根深く浸透して行くその周到さに驚くと共に、こうした裏世界には人間社会の様々な縮図が濃縮されていて、思わず意識が入り込んでしまうと言うか、誤解を恐れずに言えば、嵌ってしまう人の気持ちも分からなくないと思ってしまう。(しかしそこに一度でも身を置くと、抜けられない鉄の掟があり、その非情さに背筋が震えまくるのだけど。。)

劇中では、マフィアのボスっぽい人(すみません、あんまり詳しくないんで💦)が登場するたびに死因とその西暦がテロップで流れるのだけど、それがはぼ1980年の暗殺に集約されている。
この時代に何があったかと言うと、第二次マフィア戦争と呼ばれるファミリー同士の血で血を洗う大抗争。
こちらについては「ゴッドファーザー」辺りが詳しいので、未見の方は是非どうぞ…☹️💧。

追記)
ご存知の通り、本作はNetflixの配給です。というのは、企画の段階でカネにならないと踏んだパラマウントが降りたからです。
スコセッシは、坊主憎けりゃ、、の流れなのか、マーベルをテーマパーク呼ばわりして物議を醸しました。
同様に、ルーカスは「スターウォーズ」のディズニーへの権利委譲後にSW新作への自分の意見がことごとく却下されたことなどで「僕は子供たちを奴隷商人に売ってしまった」と嘆き、顰蹙を買いました(後に謝罪)。 

作家性の高さなど求めない、カスタマーファーストのご時世に暗澹とすると共に、尊敬する諸監督への扱いに対しても怒りを覚えます。と同時に、本作は映画館で観るべき映画なのだと強く訴えたいです😢。
みかぽん

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