茶一郎

アイリッシュマンの茶一郎のレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.7
 『ゴッド・ファーザー』以後のギャング映画の開拓者が自ら、そのジャンルの棺桶を作る『アイリッシュマン』。
 実録ギャング映画×マーティン・スコセッシ監督×主演ロバート・デ・ニーロとくると、『グッド・フェローズ』……『カジノ』……に続くイケイケなギャング成り上がりモノを想起しますが、本作は静かに淡々と成り上がりモノを語る。信仰を裏切ってしまった、魂を救えなかった者の懺悔を観客はただただ聞く3時間半です。

 もちろんそんな元神父を目指していたスコセッシ的「信仰」とキリスト教の映画である以上に、主人公と上司、相棒、その三角関係を描く最高にホモソーシャルな映画である一方、そんな男性性の世界の虚しさ・限界を描くのが『アイリッシュマン』です。 
 スコセッシのギャング映画のトレードマークである長回しのカメラは老人ホームに入り、『グッド・フェローズ』の疾走するOPはタバコ休憩を挟む老人のノロノロ運転で再現される。そして棺桶を値切る、この虚しさ。 

 『アイリッシュマン』以前・以後でギャング映画を見る観客の意識は全く違うものになってしまいます。

 動画ではもっと詳しくレビューしました。 https://www.youtube.com/watch?v=CXXUU2hsn6o
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