とんちゃん

ノクターナル・アニマルズのとんちゃんのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.0
オープニングが巨漢裸体の熟年女性が複数笑顔で登場と圧倒される…
デヴィッドリンチでも流石にここまでダイレクトに表現しなかっただろうと思う程強烈でした。(その裸婦人は劇中に再登場します)

オースティンライトのベスセラー小説、原題 Tony and Susan をモード界の寵児トムフォードが監督脚本。
主演エイミーアダムス、ジェイクギレンホール

あらすじ
スーザン(エイミーアダムス)に20年前に別れた元夫エドワード(ジェイクギレンホール)から校正刷りされた小説が送られてきた所から始まる。
タイトルは「夜の獣たち」ノクターナルアニマルズ
巻頭に“スーザンに捧ぐ”とある。
何でもスーザンと別れた事がキッカケに着想を得たとか、など付随した手紙に綴られていた。
現在スーザンは結婚し、アートディレクターとしてその地位を築いている。
子供は一人、大学生で家を出ている。
ただ夫とは冷えた関係にあった。

家で一人エドワードの小説を読み始めるスーザン
内容は主人公トニーと妻娘の3人が夜中に車で移動中、愚連隊に目をつけられ追われる話なのだけど

いやあこの小説を読み出した辺りから一気に緊迫する空気に包まれました。
それは恐怖ですね、
そして怒りと悲しみ

スーザンはトニーをエドワード、母娘をスーザンとして見立て想像している事に注目。

また、20年前の回想シーンも映し出される。それはエドワードとの出会いから別れまでだった。

小説に引き込まれていくスーザン

描き出されるトニーの心情がエドワードと重なっているのかなと始めは思った。

それだけでなく当時のスーザン自身と重なって見えたのだった。
愛しているのに手放してしまった後悔

この作品のラストがラストだけに観た人よって解釈が違って見えてくる様に出来ている。




ネタバレ





【原作との違い】
エドワードとスーザンの離婚は20年前ではなく25年前
スーザンに兄は存在しない。
スーザンの母親はエドワードとの結婚に賛成である。
スーザンは妊娠も中絶もしていない
スーザンは隣人との不貞行為を告白し離婚。

これだけ違うと全く印象が違ってくる。
原作は原題の「トニー&スーザン」の意味の通り、読み手のスーザン自身がトニーに感情移入している描写が多い。

それがトムフォードの場合、スーザンはトニーをエドワードと見立てている。
妻娘を奪われたトニーの心情と恋人が奪われ子供(中絶)も奪われたエドワードの心情が重なって見える様に演出されている。
カトリック教徒における中絶は殺人と同じ

原作では共感。映画では復讐

自分なりの解釈
小説の中で起きた出来事は全て事実だったのでは?つまりエドワード本人の体験談なのではないかと思う。
エドワードは独身(スーザンの思い込み)ではなく本当は結婚し子供も出来ていた。それ故に20年(25年)もの歳月があったのではないかと解釈しています。
伏線は回想シーンで、エドワードが書き上げた原稿を読んだスーザンの感想から
「あなたは自分の事しか書いていない」
これは変わっていない。