Inagaquilala

ノクターナル・アニマルズのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
3.6
好きな俳優のひとりであるジェイク・ギレンホールが出演しているので、公開2日目に劇場に出かけた。ジェイク・ギレンホールは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「プリズナーズ」や「複製された男」に出演しているが、同じくドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「メッセージ」で異星人と交流する言語学者を好演したエイミー・アダムスとの共演だけに、作品への期待も高まっていた。ジェイク・ギレンホールとエイミー・アダムスの共演と言っても、ふたりはエイミー・アダムス演じるスーザンの回想に登場するだけだ。

物語はかなり悪趣味な肥満女性のダンスから始まる。これと複雑に車が流れるハイウェイのインターチェンジの映像が交錯して、冒頭から不穏な予感が漂う。ダンスはアートギャラリーのオーナーであるスーザンが仕掛けたイベントらしく、インターチェンジの映像は彼女の頭のなかをシンボライズしているようにも思える。スーザンが家に帰ると、20年前に離婚したエドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が書いた小説「ノクターナル・アニマルズ(夜の獣たち)」のプルーフが送られてきていた。

週末を夫と過ごそうと提案するスーザンだったが、夫はこれから仕事でニューヨークに飛ぶと言って、出かけてしまった。不眠症で悩むスーザンは、到着したのを見計らって夫と連絡をとるが、彼の傍に女性の存在を感じてしまう。眠れないスーザンは元夫から送られてきた小説を読み始めるが、次第にそこで書かれている物語に引き込まれてしまうのだった。

映像では、小説を読んでいる現在のスーザンと小説のなかで起こる出来事が交互に描かれていく。現在のスーザンのシーンでは、元夫と別れることになった真相も回想として描かれていく。そして、小説を読み進むにつれて、彼女の心のなかに変化が現れはじめる。やや入り組んだ構造をとっている作品なのだが、要はするに小説を送りつけてきた元夫への心の変化が物語の主筋なのだ。小説のなかの劇中劇に主人公は次第に魅せられていくのだが、どう見てもそれほど魅力のある物語ではない。こちらの劇中劇の主人公を演じるのもジェイク・ギレンホール(一人二役)なのだが、明らかに元夫と重ね合わせる構造をとっているのだが、それほど観ていて感情移入できるものではない。

監督はファッションデザイナーとしても活躍しているトム・フォードで、この作品が「シングルマン」(2009年)に継ぐ第2作目ということだが、確かに意匠は凝ってはいるのだが、肝心の物語の練り込みがやや足りないような気もする。レストランでひとり佇むスーザンを映しながらエンドマークが打たれるのだが、それとて何かスタイルばかりが先行して、肝心の部分をはぐらかしているようにも受け取れる。小説というものが物語を動かす最大の起動力になっているだけに、ここはもっと力強い叙述を望みたい。雰囲気やファッションで惑わされることなく。
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